公認心理師試験対策:②問題解決能力と生涯学習
②問題解決能力と生涯学習
今回は、ブループリントの2番目、「問題解決能力と生涯学習」についてまとめます。
前回の記事で、公認心理師の義務として「資質向上」を挙げました。
資質を向上させるためには、専門家としての課題を発見し、それを解決することを繰り返します。
その自己課題発見能力と解決能力についてまとめた後、
課題発見と解決のサイクルを通した生涯学習についてまとめます。
自己課題発見と解決能力
専門職にかかわらず、高い業績を残す人には共通の行動特性があります。
この行動特性は「コンピテンシー」と呼ばれ、公認心理師においても
専門家としてのコンピテンシーが注目されています。
Wikipediaでは、コンピテンシーの定義として以下が挙げられています。
「コンピテンシーとは、組織の置かれた環境と職務上の要請を埋め合わせる行動に結びつく個人特性としてのキャパシティ、あるいは、強く要請された結果をもたらすものである」(Boyatiz,1982)
「コンピテンシーとは、職務や役割における効果的ないしは優れた行動に結果的に結びつく個人特性である」(Evarts, 1987)
共通しているのは、所属する集団において向けられる要求に応えるための効果的な行動を起こす個人特性であるという点であるようにみえます。
心理師においても、医療、教育、司法、産業、福祉それぞれの領域で違った要求が向けられます。
そのような中で、効果的な行動を起こすための行動特性を身につけることは、資質の向上に欠かせないでしょう。
心理師のコンピテンシーの向上に関しては、「反省的実践」という考え方があります。
反省的実践とは、常に自身の実践を振り返り、必要に応じて行動を修正していくことです。
具体的に、反省的実践として以下の活動が挙げられます。
- 毎回の面接記録の作成
- スーパーヴィジョン
- ケースカンファレンス
臨床心理士のトレーニングを受けてきた人にとっては、以上の活動は日常的に行っていることだと思います。
スーパーヴィジョンは、面談形式で面接経過をスーパーヴァイザーに報告し、その時点でのアセスメントや今後の方針について議論します。
面接場面を模擬して、面接中の心理師の関わり方を客観的にみるような形式のスーパーヴィジョンもあります。
ケースカンファレンスは、発表者が面接経過を報告し、集団で議論する形式をとり、多面的に事例を検討します。
また、心理師の人間としての成長機会として、教育分析などを受ける人もいます。
この話題は試験に出ないと思いますが、
近年では、Self-Practice/Self-Reflection(SP/SR)というトレーニングも注目されています。
SP/SRは、いくつかのモジュールで構成される構造的なCBTのトレーニングです。
生涯学習への準備
臨床家の成長モデル
以上のような自己の課題発見と解決を繰り返し、心理師はその専門性を高め続けます。
『公認心理師現任者講習会テキスト』では、Ronnestad & Skovholt (2003)の「臨床家の6期発達モデル」を、紹介しています。
この6期発達モデルでは、臨床家の成長は以下の6期で整理できるとしています。
- 素人援助者期
- 初学者期
- 上級生期(博士後期課程にあたる)
- 初心者専門家期(博士後期課程修了~臨床経験5年程度)
- 経験を積んだ専門家期(臨床経験15年程度)
- 熟練した専門家期(臨床経験20~25年)
上記のモデルでは、博士後期課程に進んでいることが前提となっていますが、
海外には、心理臨床の専門家になるために博士課程に進むことが要件になっているところもあります。
一方で、修士課程を修了することが要件となっている公認心理師にとっては、
このモデルはどうあてはめられるのでしょうか・・・
Ronnestad & Skovholt (2003)では、面接法というインタビュー形式でデータを取ってモデルの定式化を行っており、正確に手続きをトレースすることはできませんが、日本における臨床家の発達モデルはどのようになるのか、気になるところです。
臨床家の継続学習
臨床家が成長していく過程で学習することは欠かせませんが、
臨床家が継続する学習は以下の4つの種類があります。
- フォーマルな継続学習
- インフォーマルな継続学習
- 偶発的学習
- ノンフォーマルな学習
1. フォーマルな継続学習
専門団体によって実施される正規の研修です。
例えば臨床心理士では、日本臨床心理士会、あるいは地域の臨床心理士会が主催する研修会があります。
筆者も受験生でまだ入会はできていませんが、公認心理師にも職能団体があり、
おそらく定例の研修会が開催されるのだと思います。
2. インフォーマルな継続学習
専門誌や専門書を読むことで行われる学習です。
3. 偶発的学習
心理職の業務そのものが結果的に学習になる場合を指します。
上述の「反省的実践」で学ぶことはここにあたりそうです。
4. ノンフォーマルな学習
正規でない研修会、勉強会などに参加することで行われる学習です。
大学の事例検討会(ケースカンファレンス)に参加したり、
個人が開催している勉強会、事例検討会が該当します。
今回は以上です。
次回は③他職種連携、地域連携についてまとめます。