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公認心理師試験対策:(4) 心理学・臨床心理学の全体像

※大項目が全部で24あり、番号を○で囲った表記ができなくなることを見越して、タイトルの数字は( )で囲う表記に変更しました。

はじめに

本記事は、2019年に実施される第2回公認心理師資格試験の自主学習のために、
ブループリントの項目順にキーワードとその概要を並べていきます。

ブループリントのPDFファイル

今回は、ブループリントの4番目、心理学・臨床心理学の全体像についてまとめていきます。

心理学・臨床心理学の全体像

この項目では、心理学や臨床心理学の歴史や概観をまとめます。

心理学・臨床心理学の成り立ち

要素主義

心理学の始まりは、ヴントがドイツのライプツィヒ大学に世界初の心理学実験室を創設した1879年であるとされています。
ヴントが行ってきた研究は、要素主義と呼ばれています。
要素主義とは、例えばりんごを被験者に見せたとき、被験者は「赤い」「丸い」などどんどん思いつくことを挙げていくよう求めます。
このような手続きを内観法といい、内観法によってりんごを「赤い」「丸い」といった要素に分けようとしました。
要素主義では、「赤い」「丸い」といった要素を純粋感覚、「美味しそう」「硬そう」といった要素を単純感情としています。

後に、弟子のティチェナーがヴントと対立し、構成主義ができます。
構成主義では、要素主義の要素をさらに細かな次元に分解しようと試みていたようです。
ただ、この構成主義はティチェナーの代で終わっており、大きく発展はしませんでした。
ちなみに、ブループリントのキーワードにも入っていません。

ゲシュタルト心理学

みなさんは、街中で見かけるLEDの看板で、文字が流れていくのを見たことはありますか?
ただ順番にライトが点滅しているだけなのに、文字が動いて見えるっていうのは不思議ですよね。
ゲシュタルト心理学では、このライトの点滅によって動いて見える現象を「仮現運動」と呼んでいます。

ゲシュタルト心理学は、こうしたまとまりを持った知覚について解明しようとした理論です。
また、このまとまりを持った知覚を「群化」といいます。

)()()()(

上のような文字列では、()で一つのまとまりのように見えませんか?
これが群化の例で、「閉鎖」にあたります。

また、人はよりシンプルにまとめて知覚しようとします。
この現象を「プレグナンツの法則」といいます。

精神分析

精神分析は、臨床心理学においても歴史が長く、現在でも心理療法の学派の3本柱の一つとして人気が根強いです。
精神分析学、フロイトFreud, S.)が創始者です。
フロイトは、精神分析学において人が意識できない心の領域である無意識に着目していました。
人は、意識に存在すると苦痛を感じる心的外傷(トラウマ)を無意識に抑圧することで自我を保っているものだと考えました。
治療においては、この無意識に抑圧された心的外傷を意識化することが重要であると考え、夢分析自由連想法を用いて無意識を探索する手法を取っていました。

行動主義

行動主義は、ワトソンから始まります。
これまでの理論は、意識に浮かび上がるなにかを観察することで客観性を担保しようとしてきました。
行動主義では、外部から観察可能な行動を分析することではじめて客観性が確保されると考えました。
どのような刺激を与えるとどのような反応を引き起こすかという、「刺激ー反応」の対応関係を探ろうとしました。
この「刺激ー反応」の対応関係から「S-R理論」と呼ばれています。
SはStimulus、RはResponseの略です。

パブロフは、犬を研究対象として、エサの提示に合わせてベルを鳴らすようにしました。
この手続きを「対提示」といいます。
これを繰り返すと、エサはないのに、ベルの音だけで犬の唾液の分泌量が上がったことを明らかにしました。
この対提示によるベルと唾液分泌の対応関係の成立を「レスポンデント条件づけ(古典的条件づけ)」といいます。

ワトソンは、このレスポンデント条件づけに着目し、アルバート坊やの実験を行いました。
アルバートという生後間もない幼児を研究対象とし、白ネズミと大きな音を対提示しました。
そうすると、それまで白ネズミに抵抗を示さなかったアルバートは白ネズミを怖がってしまい、白ネズミだけでなく白くふわふわしたものはなんでも怖がるようになりました。
これを「恐怖条件づけ」といいます。

新行動主義

上述の行動主義から発展し、刺激と反応の関係性はO(有機体)の状態に左右されるという考えがあらわれました。

一方で、S-R理論を徹底しつつ、行動はその直後の結果によって生起頻度が左右されると考えたスキナーのオペラント条件づけが有名です。
例えば、オペラント条件づけでは、犬がお手をするようになるのは人が「お手」と繰り返し命令したからではなく、お手をするとエサがもらえるという環境の変化が起こるからであると考えます。
この例は以下のようにまとめられます。

先行条件 行動 結果
エサなし お手をする エサあり

人の行動を理解するために、上表のようなまとめ方はかなりすっきりします。
実際、行動療法では、まずこのような特定の行動が維持する周辺要因を探ります。

公認心理師試験に向け、行動療法について理解するためには、「レスポンデント条件づけ」と「オペラント条件づけ」の理解が必須になります。

認知心理学認知神経科学

認知心理学は、人が五感で捉える情報をいかに処理するのかを追求する心理学の一分野です。
感覚や知覚、記憶、言語、思考、感情、情動、動機づけとさらに細かくカテゴリを分解することができます。
詳細は、後述したり、後日の記事で紹介します。

認知神経科学は、脳や神経の働きと心の動きとの対応を追求する心理学の一分野です。
(f)MRIや脳波などで脳の働きを捉え、同時に何らかの刺激を与えたときの心の動きとの関係を明らかにしていきます。
脳や神経については、後日の記事で紹介します。

科学者ー実践者モデル

臨床心理士のトレーニングにおいても、このモデルは重視されています。
重視されるようになったのは、1990年代頃からです。

心理臨床の実践において、心理師は実践家であるとともに科学者であるという考え方です。
関連する考え方に、「エビデンスベースドアプローチ」というものがあります。
これは、心理臨床の実践において、エビデンス(証拠、根拠)に基づいた支援や介入を行うべきとする考え方です。
自分が心理的なサービス(カウンセリングなど)を受けることを考えるとき、その時は困っているのでしょうから、より確実な手法、手段で進めてほしいと考えるものかと思います。
(もちろん面接を受ける動機によっては例外などもありますが。)
この「より確実な」手法を検討する上では、エビデンスがないと話になりません。

精神力動アプローチ

上述の精神分析をベースとしたアプローチです。
無意識の存在を前提とし、無意識に抑圧された苦痛な内容の探索が主なテーマとなります。
そうして無意識も含めた自己の理解を深めることで、精神症状が改善されると考えられています。

手続きとしては、自由連想法夢分析、転移分析などが行われるようです。
転移分析とは、治療者に向けられた感情的な反応が、患者にとって本来は重要な他者に向けたいものだと考え、治療者が患者に対して転移内容と対象をフィードバックすることで自己理解を深めるものだと理解しています。
(調べも甘く、筆者自身が精神力動アプローチをしたことがないため、あまり正確な表現じゃないかもしれません。)

認知行動アプローチ

上述の行動主義をベースにした行動療法が出発点のアプローチです。
行動療法は、上述のように行動の機能(どんな結果と結びついているか)を明らかにし、結果や先行条件を操作することで問題行動の頻度を減らす、あるいはより適応的な行動を増やすようなアプローチを取ります。
また、先程は触れませんでしたが、レスポンデント条件づけにおいては、例で挙げた「ベルー唾液分泌」の対応関係は、しばらくベルだけを提示することで唾液分泌は収まります。
この現象は「消去」といい、不安が高まる対象に曝された際の不安反応の減弱を目的とした「エクスポージャー」という治療法の背景となる理論です。

後に、ベック(A.T.Beck)が認知療法を創始しました。
認知療法は、ある状況での自動思考がその後の感情や行動に影響を与えるとし、非機能的な自動思考を引き起こす認知の歪みやその背景にあるスキーマ(信念)を分析する手続きを取ります。
コラム法といって、日記のように日常的に起こる出来事とそれに対する自動思考、感情、行動を記録することで、その時の自動思考が非機能的なものである場合にどのような認知のゆがみが発生していたのか、他の適応的な考え方はないかを探索することで、考えのレパートリーを広げていきます。

この認知療法と行動療法をうまく組み合わせて、認知行動療法ができあがりました。

現在では、第三の認知行動療法としてAcceptance and Commitment Therapyやマインドフルネスという治療法も実施されています。

具体的な治療法や理論は、後日の記事で紹介すると思います。

人間性アプローチ

いわゆるクライエント中心療法です。
クライエント個人の体験的世界に即して治療を考える、というのがベースの考え方です。
カウンセリングと聞いて、おそらく耳タコなほど「受容」「共感」「傾聴」というワードを見かけたり聞いたりすると思います。
これらのキーワードは、人間性アプローチでの考え方がベースになっています。

つまり、他のアプローチでも、人間性アプローチの考え方を少なからず取り入れており、カウンセリングの共通基盤のような位置づけだと筆者は理解しています。

ナラティブ・アプローチ

ナラティブは「語り」のことです。
患者の「語り」を通して、患者らしい解決法を探索するアプローチです。
一度ナラティブ・アプローチを実践している方から話を聞きましたが、ナラティブ・アプローチで重視するのはあくまで「語り」がどう変化したか、のようです。
どう治ったか、課題は解決したのか、なども気になるところですが、おそらくそういったことも「語り」に含まれているのだろうと思います。

社会構成主義

Wikipediaでは、「個人や集団がみずからの認知する現実の構築にどのように関与しているかを明らかにすることである」と定義されています。

ここでいう個人が認知している現実の構築は、語りから理解します。
その点で、社会構成主義的アプローチというとナラティブ・アプローチも含まれることも往々にしてあります。

この辺ほんとに勉強不足ですが、なぜナラティブと社会構成主義のキーワードを分けたのだろう…

人の心の基本的な仕組みとその働き

感覚、知覚

感覚とは、何らかの刺激を受容器が受け取り、脳に信号を送るプロセスを指します。
目であれば、光を受け取り、輝度や照度の情報を脳に伝えます。
耳であれば、音という空気の振動を受け取り、その周波数情報を脳に伝えます。

この辺の話をすると、最近「クオリア」という概念に関心があります。
説明が難しいのですが、簡単に言えば「あの感じ」です。
実際の問題に落とし込んだ表現で言えば、目の見えない方に対して、赤をどう説明するか、という問題です。
どうやるんでしょう。

知覚とは、感覚受容器が受け取った情報に意味づけをするプロセスです。
光の情報から、今目の前にいるのが人だとわかったり、ある音が声だとわかることが知覚です。

記憶、学習、言語、思考

記憶は、情報を以下のようなプロセスで処理することを言います。

  • 記銘→保持→想起
  • 符号化→貯蔵→探索

どちらも同じことを言っていて、覚えて→持っておいて→思い出すプロセスです。
表現は違いますが、この3つの並びが入れ替わって覚えてしまわないように気をつけたいところです。

記憶にはいくつか種類があります。詳細は後日紹介します。

学習は、先程のオペラント条件づけやレスポンデント条件づけが相当します。
条件づけが成立する=学習する、といっても大きくは間違えていないと思います。

言語については、子どもの言語の習得(発達)過程が問題になりやすいようです。
子どもは1歳前後で言葉を話しだします。そこから3歳にかけて急速に発達していきます。

キーワードとして、よく問題に出ているのは「クーイング」です。
乳児が落ち着いて機嫌の良いとき、「あー」とか「うー」といった発声を行います。
これをクーイングといいます。
クーイングは、喉の奥の空間が広がっているために起こるものです。
音声は、声帯構造と口腔構造により決まります。
ざっくりいうと、声帯で声の高さ、口腔で音色を調節して発話音声はできあがります。

クーイングが発せられる頃に喉の奥の空間が広がるということで、言語の発達というのは言葉を覚えるだけでなく、口腔構造の発達による音響モデルの学習も兼ねているんですね。

思考については、ここでは問題解決に絞ってまとめます。
問題解決においては、試行錯誤と洞察がキーワードとして挙げられます。

試行錯誤とは、様々な思考を行うことで、偶然の解決に至る過程です。
有名な実験はソーンダイクの猫の問題箱です。
問題箱は、紐を引くと扉が開くようにできています。
箱の中に猫を入れ、エサを箱の外に置きます。
そうすると、猫はエサを取ろうといろいろな行動を起こし、偶然ひもを引っ張り扉が開くことを経験します。
その後もう一度問題箱に入れると、前の試行よりも早くにひもを引いて扉をあけ、数を重ねるほど扉が開くまでの時間が短縮されます。

洞察とは、問題を構成する要素間の関係と構造を全体として理解することで解決に至る過程です。
有名なのはケーラーのチンパンジーを使った実験です。
部屋の高いところにバナナを吊り、部屋には台と棒がおいてあります。
台と棒という要素の関係を全体として理解すれば、台に乗り、棒でつつくことでバナナを取ることができますが、チンパンジーはその関係を見事見抜き、バナナを取ることに成功しています。

動機づけ、感情、情動

動機づけとは、広義には、目標の達成に向かって自己を調節するための実行機能であると言えます。
動機づけを高める要因としては、目標があることと、結果を実感していること、できると思えることなどが挙げられます。
動機づけには2種類あり、「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」があります。

項目 内容
内発的動機づけ 報酬に依存しない動機づけ
外発的動機づけ 報酬に依存した動機づけ

ここでいう報酬とは、モノ、お金、トークン、注目、称賛などなどが挙げられます。

内発的動機づけが高い子どものほうが知的好奇心が高く、学習内容の理解も深いといわれ、これをエンハンシング効果といいます。
一方、内発的動機づけが高い子どもに対して、その行動に報酬を与えると、内発的動機づけが低下する現象があり、これをアンダーマイニング効果といいます。

情動(emotion)は、個人の事象や刺激に対する一過性の、生理的な変化や顔表情の変化を伴う評価的感情です。
大抵は快あるいは不快な評価的な反応です。

情動には、2パターンの節があります。

理論 内容
ジェームズ=ランゲ説 情動の正規には生理的喚起を前提とする 「泣くから悲しい」
キャノン=バード説 情動と生理的変化は同時に起こる 「悲しいから泣く」

感情(affect)は、情動よりもより主観的な体験に拠った現象で、快ー不快から喜怒哀楽へと分化しています。
一方、情動と比べて生理的反応を伴うか否かにはこだわっていないように理解しています。

また、より長期的でゆるやかな主観的体験を気分(mood)といい、この3つの区別が難しいながらも重要とされています。

個人差

心理学において、個人差は極めて重要なファクターになります。
心理学は「統計の科学」とも言われており、「〇〇な人は☓☓になりやすい」といった発見が多くありますが、間違いなくそれに当てはまらない人が一定数います。
そして、あてはまらない例が無視できない程度にはいて、この点で大きな限界点として指摘されています。
一方で最近では、個人差というファクターをモデルに含めて解析する流れもでてきています。

最近は心理学から離れてしまっているので今の流行りを追っかけきれていないのですが、このキーワードでどう問題出すのか疑問です。

社会行動

社会行動に関わるキーワードを思いつく限り並べてみました。

項目 内容
認知的不協和理論 フェスティンガーが提唱。矛盾によって生じる不快感を低減するために、矛盾のない状態に認知を変えたり、不協和を生じる認知を回避すること。
印象形成 アッシュの印象形成実験が有名。「温かい」「冷たい」といった印象形成の核となる語を中心特性と呼び、中心特性から影響を受ける語を周辺特性という。
社会的促進 ある課題に取り組む際、他者がいることでその課題の遂行が促進されること。
社会的抑制(社会的手抜き) ある課題に取り組む際、他者がいることでその課題の遂行が抑制されること。
心理的リアクタンス 態度や行動の自由が脅かされたときに喚起される、自由の回復を目指す動機づけ状態。
フット・イン・ザ・ドア法 受け入れやすい要請にまず承認させ、段階的に大きな要請を承認させる説得方法。
ドア・イン・ザ・フェイス法 受け入れがたい大きな要請を先に提示し拒否させることで、次に提示する小さな要請を拒絶しにくくする説得方法。
帰属 原因の因果的な解釈を行うこと。能力や性格など自身が原因であるとする帰属を内的帰属、他者や周囲の状況などを原因であるとする帰属を外的帰属という。
発達

発達では、決まってピアジェの理論が出てきます。
そこで、『公認心理師現任者講習会テキスト2018年版』を元にピアジェの理論をまとめました。

段階 時期 内容
感覚運動期 誕生~2歳 種々の感覚を通して自分や外界を受け止め、運動的な働きかけを起こす中で行為の枠組み(シェマ)を形成する。
前操作期 2~7歳 様々な対象に対して内的表象を形成し、それを身振りや言語などを通して表現できるようになる。
具体的操作期 7~12歳 具体的事物に関しては、見た目に左右されずに、その本質的特徴である数・量・重さ・面積などを的確に理解し、論理的思考が可能となる。
形式的操作期 12歳~ 経験的事実だけでなく、可能性として考えられる状況を仮想したり、仮説を設定した上で、抽象的概念や知識の獲得が飛躍的に進む。

前操作期では、自己中心性がキーワードになります。
自己中心性とは、自己と他者を区別できず、他者の視点を理解できないことです。
その後の具体的操作期で自己中心性から脱する脱中心化が起きます。


他にも、フロイトの発達理論、エリクソンのライフサイクル論があります。

これらは12番目の発達の回でまとめます。

今回は以上です。
次回は、5番目の「心理学における研究」についてまとめます。

参考文献

一般財団法人 日本心理研修センター監修『公認心理師 現任者講習会テキスト 2018年版』金剛出版
丹野ほか『臨床心理学』有斐閣