Muji Blog

いろんなトピックを備忘録的に発信していきます。トピック例:{画像処理、信号処理、心理学}

公認心理師試験対策:(8)学習および言語

はじめに

本記事は、2019年に実施される第2回公認心理師資格試験の自主学習のために、
ブループリントの項目順にキーワードとその概要を並べていきます。

ブループリントのPDFファイル

今回は8番目、「学習および言語」についてまとめていきます。
※全部のキーワードについて調べていると間に合わなくなりそうなので、以下のルールでキーワードを絞ります。

  • ルール1 : 昨年度のブループリントから追加されているキーワード
  • ルール2 : 筆者の独断で学んでおいたほうが良いと思うキーワード

学習および言語

人の行動が変化する過程

初期学習

生体の発達段階において、神経系の可塑性が一過的に高まり、刺激による効果が極めて高くなる期間があります。
この期間は生後の限られた期間であり、「臨界期」と呼ばれます。
臨界期の間には連合学習も起こりやすく、「刷り込み」という現象が発現します。
鳥が孵化したとき、最初に見たもの(動き、声を出すもの)を親だと思い込み、後ろをついてくるという話は有名ですが、これが刷り込みです。

また、動物には、生得的にすでに備わっている行動が遺伝的にプログラムされており、何らかのきっかけ(鍵刺激あるいはリリーサー)により行動が発現するという理論があります。
これを生得的解発機構(Innate Releasing Mechanism : IRM)といいます。

古典的条件づけとオペラント条件づけ、恐怖条件づけと嫌悪条件づけ

古典的条件づけ、オペラント条件づけ、恐怖条件づけについては、以下の記事の行動主義と新行動主義で触れました。

seijmura.hatenablog.com


嫌悪条件づけは、嫌悪刺激が用いられた条件づけです。
特に、味覚嫌悪条件づけは、依存症の治療でも応用される理論です。
例えば、アルコール依存症の方には抗酒薬が用いられます。
抗酒薬は、服薬後にお酒を飲むと、下戸の方のように吐き気や動悸が発現します。
つまり、お酒と吐き気や動悸などの嫌悪刺激を連合学習させることで、飲酒頻度を減らそうとします。

馴化と脱馴化

馴化とは、用語の通りの説明をすると、刺激に馴れることを指します。
刺激に長時間曝され続けると、その刺激に伴って起こる反応が落ち着くような現象がみられます。
例えば、虫が苦手な人がいて、その人は虫を見ると動悸、発汗などの恐怖反応が発現するとします。
そこで、長時間虫の写真を見てもらうことにすると、最初は発現していた恐怖反応が、徐々に落ち着いていきます。
理屈としては、恐怖反応も体力を使うもので、ずっとその反応を続けてはいられないようです。
そして、「怖い」といった感情も、身体の感覚とリンクして起こるため、動悸や発汗などの反応が落ち着いてくると、そのフィードバックを受けて怖さが和らいでいく、といったプロセスを経ると考えられています。

さて、この例では、虫の写真に馴れたので、次は実物に馴れようとしました。
実物の虫を前にして、最初は虫もじーっとしていたのですが、急に「バタバタ」と音を立てて飛び出しました。
こうなると馴れてきたこれまでの過程がリセットされます。
これを脱馴化といいます。
脱馴化とは、馴化した後で別の刺激が与えられると、馴化した刺激に対する反応が大きくなる現象です。

般化、弁別、転移

般化とは、学習した刺激に類似した刺激を与えても同様の反応を示す現象を指します。
上で挙げた過去の記事で、アルバート坊やの例を使いましたが、アルバート坊やは、白ネズミだけでなく白くふわふわしたもの全般を怖がるようになりました。
このように、実際に与えていた刺激は白ネズミでしたが、白くふわふわしたもの全般にまで刺激の対象が広がることを(刺激)般化といいます。

弁別とは、先行条件に追加されるパラメータで、行動の生起頻度を調整するものです。
犬にお手を覚えさせる例で考えたとき(下図)、「お手」と言ったときだけお手をするようにしたいとします。
その場合は、お手と言ったときにお手をするとえさをあげ、それ以外の状況でお手をされてもえさをあげないようにします。
このときの「お手」が弁別刺激となります。

f:id:seijMura:20190714122352p:plain

転移とは、ある行動を学習した後の学習に影響を与えることです。
ざっくりとした説明をすると、ある楽器を演奏するスキルを習得すると、別の楽器も覚えが早くなるといった現象を指します。
このようなある学習により後の学習を促進する現象を、転移の中でも「正の転移」といいます。
正の転移に対して、「負の転移」もあり、これはある行動を学習した後の学習を妨害する現象を指します。

言語の習得における機序

意味論、語用論、統語論、音韻論、形態論

以下の表で、それぞれがなにを明らかにするのかを整理します。

項目 概要
意味論 言語が持つ意味を明らかにする
語用論 言語の用法を体系化する
統語論 意味論、語用論から、文の構造を明らかにする
音韻論 音素の系列のルールを明らかにする
形態論 単語の内部構造を扱う。文脈によって変わる語形のルールを明らかにする
文法獲得(普遍文法、生成文法、言語獲得装置、言語獲得支援システム)

普遍文法とは、すべての人間が、とくに障害がない限り、生まれながらに普遍的な言語機能を備えており、すべての言語が普遍的な文法で説明できるとした理論です。

生成文法とは、ある言語の文法を定式化しようとする理論です。定式化ができれば、単語を置き換えるだけでいくらでも文が作れるといった考え方を持ちます。

言語獲得装置とは、子どもが持つ言語を生成する生得的な精神的容量です。母親から教わっていない、聞いたこともない正しい文を子どもは生成でき、それは子どもが生得的に言語を想像する力を持っているからだとチョムスキーが指摘しており、この力を「言語獲得装置」といいます。

言語獲得支援システムはブルーナーが提唱した理論です。
言語獲得装置では、言語を習得する要因が個人内にあるという主張でしたが、言語獲得支援システムでは、言語を習得する要因が環境側にあると主張しています。
子どもは、大人や年上のきょうだいとの会話の中から言語を習得するものだという主張で、言語獲得装置と対立しています。

言語獲得過程(クーイング、喃語、一語期、二語期、多語期)

各段階の時期だけまとめておきます。

段階 時期
クーイング 生後2,3ヶ月頃~
喃語 生後6ヶ月頃~
一語期 生後10ヶ月~
二語期 1歳半~
多語気 2歳~
失語症ウェルニッケ失語ブローカ失語

ウェルニッケ失語は感覚性失語といい、言葉は流暢に発しますが、その意味はめちゃくちゃである症状がみられます。
左大脳半球の上側頭回後部の損傷により起こります。
ウェルニッケ野は、側頭葉と頭頂葉に接し、聴覚野を囲むように存在します。

ブローカ失語は運動性失語といい、発語の流暢性が著しく低下します。
左大脳半球の下前頭回後部の損傷により起こります。
ブローカ野は前頭葉に存在します。

参考文献

一般財団法人 日本心理研修センター監修『公認心理師 現任者講習会テキスト 2018年版』金剛出版