Muji Blog

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公認心理師試験対策:(9)感情および人格

はじめに

本記事は、2019年に実施される第2回公認心理師資格試験の自主学習のために、
ブループリントの項目順にキーワードとその概要を並べていきます。

ブループリントのPDFファイル

今回は9番目、「感情および人格」についてまとめていきます。

感情および人格

感情に関する理論と感情喚起の機序

大体は以下の記事を参考にしています。
bsd.neuroinf.jp

感情に関する神経科

1. 扁桃体(Amygdala)
側頭葉内側の奥にある、アーモンド型の領域です。
大脳辺縁系の一部と位置づけられます。
情動的な出来事に関連づけられる記憶の形成と貯蔵において主要な役割を担います。
恐怖反応や不安反応の神経生理学的な研究では、よく注目される領域です。

2. 視床下部(Hypothalamus)
間脳に位置する4g程度の小さな組織です。
摂食行動、睡眠、攻撃行動、性行動といった本能的な行動に関連する領域です。
体温調節やストレス応答などの管理も担っており、交感神経と副交感神経、内分泌を統合的に調整することで、生体の恒常性維持(ホメオスタシス)に重要な役割を果たします。

3. 島皮質(Insula)
前頭葉、側頭葉、頭頂葉基底核に囲まれた領域です。
前部島では、行動発現、知覚、内受容、情動など、認知機能に関する活動がみられます。
また、島の活動は、以下のような知覚、認知機能に関わるという仮説があります。

島の活動
味覚、痛覚、触覚、嗅覚、報酬、社会的な痛み、情動、社会的情動、共感、内臓覚、内受容、自己意識


4. 前頭前野腹内側部
前頭前野は、人を人たらしめる、思考や創造性を担う脳の最高中枢です。

映画「カッコウの巣の上で」で、主人公マクマーフィーは、最後にロボトミー手術を受けて廃人のようになってしまいます。
このロボトミー手術は、額に穴を開けて前頭前野をメスでぐりぐり傷をつけるような行為です。
前頭前野とその他の領域とのネットワークとを断ち切るようなイメージです。

腹側部(眼窩部)は、情動・動機づけ機能とそれに基づく意思決定過程に重要な役割を果たしています。
内側部は、社会的行動を支えるとともに、葛藤の解決や報酬に基づく選択など、多様な機能に関係しています。

5. 低次回路
ルドゥーの感情二経路説における、視床から直接扁桃体へと伝わる、迅速だが粗い処理の経路です。

6. 高次回路
ルドゥーの感情二経路説における、視床から大脳皮質を経由して扁桃体へと伝わる、遅いが密な処理の経路です。

感情の進化

このトピックについては、福田(2008)でまとめられていました。

要約すると、生物の進化の過程において、まず発達した感情は恐怖です。
捕食者から逃げるためには、危機を察知しなければなりません。恐怖はアラートの役割を果たします。
前回の記事では触れませんでしたが、明確な脅威が目の前に現れた場合に生じる反応は恐怖であり、生じる行動は逃避行動です。
一方、恐怖反応では間に合わないこともあるかもしれません。
臆病な個体は、「〇〇だったら☓☓だろう」といった予期に基づいて行動するかもしれません。
そうすると、「〇〇な」状況そのものに対して不快な感情を持つようになります。
このとき、「〇〇な」状況そのものは脅威ではないことがポイントです。
このような、明確な脅威は目の当たりにしていないが、何らかの脅威的な未来を予期して生じる感情が不安であり、生じる行動は回避行動です。

感情が行動に及ぼす影響

感情の制御

感情制御(emotion-regulation)とは、ざっくりいうと、「いつ何の感情をどのように体験するかを選択すること」です。
自己制御(self-regulation)の一部に位置づけられます。
こういったregulationの問題には、制御するための認知的な資源が(特性的に、あるいは状態的に)どれだけあるかという問題がついてきます。
端的に言えば、精神的に疲れている状態では、コントロールがうまく効かず、衝動的な行動に走りやすかったり、感情を抑えられず強烈な感情を体験する可能性があります。

感情と情報処理

上述のような制御も含め、感情に関わる情報処理には、ワーキングメモリが関わります。
ワーキングメモリでは情報の選択、組織化、統合、長期記憶の検索が行われます(Moreno, 2006)。
また、上述の自己制御がワーキングメモリでの情報処理を調整するため、精神的に疲れている状態では、これらの処理がうまくいきません。
さらに、「メモリ」という言葉の通り、ワーキングメモリそのものにも容量があります。
(特に感情的な)情報の処理がうまくいかないと、メモリをどんどん感情的な情報に食いつぶされてしまい、そのほかの処理が追いつかなくなります。
その結果、目の前の仕事や作業の効率が落ち、ネガティブな感情が生起する、といった悪循環に陥ります。

感情的になったり、うつを発症すると仕事でミスが連発するのはこういったプロセスを経ているためと考えられています。

本日は以上です。
次回は(11)社会及び集団に関する心理学をまとめます。
※(10)脳・神経の働きは昨年からの追加項目がない上に、これまで触れてきた内容とかなりかぶっているので省略します。

参考文献

一般財団法人 日本心理研修センター監修『公認心理師 現任者講習会テキスト 2018年版』金剛出版
Moreno(2006)."Does the modality principle hold for different media? A test of the method‐affects‐learning hypothesis". Journal of Computer Assisted Learning