公認心理師試験対策:(12)発達
はじめに
本記事は、2019年に実施される第2回公認心理師資格試験の自主学習のために、ブループリントの項目順にキーワードとその概要を並べていきます。
今回は12番目、「発達」についてまとめていきます。
発達は出題割合が5%と、他の基礎的な問題に比べて問題数が多いです。
前年度からの追加項目はありませんが、筆者自身苦手な分野でもあるので、キーワードを絞って整理していきます。
発達
認知機能の発達及び感情・社会性の発達
素朴理論
以下の文献を参考にしました。
素朴理論とは、日常生活で独自に作り上げられ、通常は専門家の考え方(科学理論)とは異なる理論を指します。
素朴理論には、以下3つの特徴があります。
- 専門家の考え方とは異なる
- 多くの人に共通する考え方である
- 学校の授業を受けたくらいでは修正されない
つまり、子どもの発達において考えると、学習前にすでに経験的に獲得している素朴理論によって、学校の授業での学習が阻害される可能性があるということです。
この資料の例を引用しましたが、子どもは地球の形状(宇宙空間に浮いた丸い物質)について学習する前には、すでに以下のような素朴理論を獲得しています。
- 物体は支えなしに宙に浮けない
- 物体が動かずに静止した状態を保つためには、水平な面に置かれていなければならない
つまり、以下の点で矛盾してしまい、子どもにとっては受け入れがたいのです。
素朴理論 | 学習内容 | 子どもからみた矛盾点 |
---|---|---|
物体は支えなしに宙に浮けない | 地球は宇宙空間に浮いている | 支えもないのに浮くはずがない |
物体が静止するためには水平な面の上に置かれていなければならない | 地球は丸い | 丸い物体の上にあるものが止まっていられるはずがない |
学習面においては、以上のように素朴理論と発達が関連するようです。
一方で、臨床でターゲットにされるような学校集団への適応に関わるような問題と素朴理論との関連については調べても見つけられませんでした。
想像するに、素朴理論と学習内容との矛盾を解消し、概念を再構築するプロセスにおいて、自閉スペクトラム症児は社会的相互作用に障害がみられるため、概念の再構築が遅れてしまうといったリスクはありそうです。
(あくまで想像です。)
自己と他者の関係のあり方と心理的発達
相互規定的作用モデル(transactional model)
人と人、サブシステムとサブシステムの双方向に例えられる、互いに考慮した相互作用モデルです。
コミュニケーションやストレスコーピングの文脈で検討されているモデルです。
コミュニケーションとの関係については、以下の記事を見つけました。
www.slideshare.net
人は、以下の要因に依存して対人場面において反応を起こします。
- 背景
- 事前の経験
- 態度
- 文化的信念
- 自尊感情
人は互いに言語的、非言語的なメッセージを送り合いますが、相互規定的作用モデルの違う人にとっては、混乱するものであることもあります。
つまり、コミュニケーションにおけるこのモデルはコミュニケーションを円滑にもする一方で、メッセージにノイズを乗せる可能性もあるものだと考えられます。
このノイズはストレッサーにもなり得て、上述のストレスコーピングと相互規定的作用モデルとの関係の話に繋がります。
LazarusとFolkmanは、ストレスと相互規定的作用モデルのような環境と個人との相互作用とストレスとの関係に注目しました。
その上で、例えば相互規定的作用モデルを変容させることでストレッサーがストレッサーでなくなったり、自分で対処方略(コーピング)を身につけることでノイズを除去できる可能性を指摘しました。
生涯における発達と各発達段階での特徴
Developmental Origins of Health and Disease (DOHaD) 仮説
この仮説については、以下の記事で解説されていました。
ポイントは以下です。記事の引用です。
発達過程(胎児期や生後早期)における様々な環境によりその後の環境を予測した適応反応(predictive adaptive response)が起こり、そのおりの環境とその後の環境との適合の程度が将来の疾病リスクに関与する
生後間もないマウスを葉酸欠乏症にすることで、恐怖反応が過剰になるという例を聞いたことがあります。
また、記事にもあるように、ヒトであっても、妊娠期に胎児が栄養不足になると栄養を溜め込みやすい体質になり、メタボリックシンドロームのリスクが高まるようです。
精神的な症状においてもこのようなエピジェネティクス的な視点での理解が進んでいて、特にDNAメチル化との関連がわかってきているようです。
この文献では、児童虐待をきっかけにDNAメチル化の変化が起こることが指摘されています。
また、DNAメチル化の変化は成長後のストレス耐性、不安や社会性、恐怖記憶の獲得と固定等の行動面に影響を与えることもわかってきています。
生成継承性 (generativity)
「ジェネラティビティ」とカタカナ表記での用語の方が広く知られているようです。
この記事で解説されていました。
ジェネラティビティとは、エリクソンの造語であり、「次世代を導き、確立することへの関心」と定義しています。
次世代にのこすものは子どもだけでなく、知識、経験、芸術作品、著書などなどいろいろありますが、高齢期になるとそういったのこすものに対して関心を持ちます。
閉経を過ぎた女性が次世代の子育てを助けるといった行為も、自身の子育ての経験や知恵を次世代にのこすような意味を持つかもしれません。
また、次世代にのこせた実感が死の受容につながるようです。
しかしながら、高齢者本人にとっては利他的行動であっても、そのモチベーションは上述したような次世代にのこす(≒次世代に受け入れてもらう)ことで、必ずしも他者にとってポジティブに受け取ってもらえません。
端的に言えば、「ありがた迷惑」になってしまうケースもあります。
記事では、どのような継承行動が高齢者と次世代の若者とのギャップを埋めるのかについて議論しており、成功体験よりも失敗体験をもとに経験を語ってもらう方が受け入れられやすいと指摘しています。
高齢者の心理社会的課題と必要な支援
サクセスフルエイジング
以下の記事を見ました。
サクセスフルエイジングとは、「良い人生を送り、天寿を全うすること」です。
これが達成されるためには、社会学的、医学的、心理学的な視点から包括的に考える必要があります。
社会学的な視点としては、上述したジェネラティビティが重要な役割を持ちます。
つまり、次の世代に継承し、自らは社会からうまく離脱していくことが重要とする「離脱理論」が提示されています。
一方で、以前は「生涯現役」という言葉にあるように、高齢者も中年と同じような心理社会的なニーズを持っており、活動を継続することが重要とする「活動理論」も提示されていました。
医学的な視点としては、健康寿命の延伸が課題になります。
疾患や転倒、フレイル・サルコペニアの予防、QOLの向上により寝たきりの期間をいかに短くできるかに注目しています。
心理学的な視点としては、成長や発達がいかに良好であるかで考えます。
エリクソンのライフサイクル論でもあるように、人は生涯を通して発達すると考えられており、高齢期においては「統合性 vs 絶望」です。
良好であるかどうかの評価は、以下の6つの指標でなされると記事にはありましたが、どの理論を引用したのかが知りたいところです。
- 自己受容
- 人生の意味
- 環境制御
- 人間的成長
- 自律性
- 肯定的人間関係
自分でも調べてみて、確認できたら追記します。
今回は以上です。
次回は(13)「障害者(児)の心理学」をまとめます。