公認心理師試験対策:(17)福祉に関する心理学
はじめに
本記事は、2019年に実施される第2回公認心理師資格試験の自主学習のために、ブループリントの項目順にキーワードとその概要を並べていきます。
今回は17番目、「福祉に関する心理学」についてまとめていきます。
この項目は出題割合が9%と出題割合が最も高いです。
公認心理師が専門的な活動をする5つの領域(保険医療、福祉、教育、司法、産業)のひとつに関わる話題のため、重点的に出題されるものと思われます。
今年追加されたキーワードは中項目(1)福祉現場において生じる問題とその背景の「精神障害」です。
知的障害、身体障害に並び、精神障害も扱うべきとのことで追加されたそうです。
追加したのはいいものの、あまりにふんわりしすぎているので、昨年の問題をベースにまとめていきます。
福祉に関する心理学
福祉現場において生じる問題とその背景
児童虐待
虐待については、以下の記事で紹介しました。
seijmura.hatenablog.com
過去問の内容に沿って以下の項目を補足します。
統計情報は、以下のページを参考にしています。
www.orangeribbon.jp
- 虐待による死亡例の加害者は実母が多く、ついで実父あるいは複数の加害者であることが多いです。
→上記事の「死亡した子どもの主な加害者」を参照
認知症
以下の記事でまとめられています。
認知症とは、以下のように定義されています。
生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態
つまり、一度獲得した能力やスキルが低下したり失われる状態を指します。
診断基準により表記は異なりますが、それぞれの診断基準を挙げます。
診断基準のまとめは、この資料を引用しました。
ICD-10
G1. 以下の各項目を示す証拠が存在する
1) 記憶力の低下
新しい事象に関する著しい記憶力の減退、重症の例では過去に学習した情報の想起も障害され、記憶力の低下は客観的に確認されるべきである。
2) 認知能力の低下
判断と思考に関する能力や情動処理全般の悪化であり、従来の実行能力水準からの低下を確認する。
1)、2)により、日常生活動作や遂行機能に支障をきたす。
G2. 周囲に対する認識(すなわち、意識混濁がないこと)が、基準G1の症例をはっきりと証明するのに十分な期間保たれていること。せん妄のエピソードが重なっている場合には認知症の診断は保留。
G3. 次の1項目以上を認める。
1) 情緒易変性
2) 易刺激性
3) 無感情
4) 社会行動の粗雑化
G4. 基準G1の症状が明らかに6ヶ月以上存在していて確定診断される。
NIA-AA (National Instituteon Aging-Alzheimer's Association)
1. 仕事や日常生活の障害
2. 以前の水準より遂行機能が低下
3. せん妄や精神疾患ではない
4. 病歴と検査による認知機能障害の存在
1) 患者あるいは情報提供者からの病歴
2) 精神機能評価あるいは精神心理検査
5. 以下の2領域以上の認知機能や行動の障害
a. 記銘記憶障害
b. 論理的思考、遂行機能、判断力の低下
c. 視空間認知障害
d. 言語機能障害
e. 人格、行動、態度の変化
DSM-5
A. 1つ以上の認知領域(複雑性注意、遂行機能、学習および記憶、言語、知覚ー運動、社会的認知)において、以前の行為水準から有意な認知の低下があるという証拠が以下に基づいている:
(1) 本人、本人をよく知る情報提供者、または臨床家による、有意な認知機能の低下があったという懸念、および
(2) 標準化された神経心理学的検査によって、それがなければ他の定量化された臨床的評価によって記録された、実質的な認知行為の障害
B. 毎日の活動において、認知欠損が自立を阻害する(すなわち、最低限、請求書を支払う、内服薬を管理するなどの、複雑な手段的日常活動動作に援助を必要とする)
C. その認知欠損は、せん妄の状況でのみ起こるものではない。
D. その認知欠損は、他の精神疾患によってうまく説明されない(例:うつ病、統合失調症)
以上から共通しているのは以下3点と思われます。
- 主に記憶、遂行機能、認知機能が障害されている。
- せん妄による認知機能の低下と区別するために、せん妄エピソードがある場合には診断が慎重になる。
- 精神疾患による認知機能の低下と区別するために、精神疾患である可能性を除外した上で認知症であるかが疑われる。
ICD-10を除く2つの診断基準では、検査や病歴があるかが基準に含まれています。
これは独り言ですが、DSM-5で何度も出てくる「有意な」とは、よく統計で見かけるあの有意性でしょうか。
何をもって(どれくらいの期間で、どれだけ低下すれば)「有意な低下」とするのか、不思議です。
今回は以上です。
次回は(19)「司法・犯罪に関する心理学」をまとめます。
※(18)「教育に関する心理学」は追加項目がないため、後回しにします。