公認心理師試験対策:(15)心理に関する支援(相談、助言、指導、その他の援助)
はじめに
本記事は、2019年に実施される第2回公認心理師資格試験の自主学習のために、ブループリントの項目順にキーワードとその概要を並べていきます。
今回は15番目、「心理に関する支援(相談、助言、指導、その他の援助)」についてまとめていきます。
この項目は出題割合が6%です。
心理学的な援助方法の詳細についての項目となるため、出題されやすいです。
心理に関する支援(相談、助言、指導その他の援助)
訪問による支援や地域支援の意義
地域包括ケアシステム
このシステムの目的について、厚生労働省HPで以下のように記載されています。
団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現していきます。
以前の記事で、サクセスフルエイジングについて触れましたが、高齢者のサクセスフルエイジングを達成するために、地域でサポートしていくようなシステムを構築していこうという流れが来ているようです。
病気になったら病院、介護が必要になったら介護などそれぞれのサービスを受けますが、利用者はこれまでのライフスタイルをできるだけ維持できるように地域から提供するサービスを充実させようという考え方です。
上で紹介したページでは地域包括ケアシステムの事例も載っているので、具体的に提供されているサービスを理解するための参考になりました。
要支援者の特性や状況に応じた支援方法の選択、調整
エンパワメント、ストレングス
この資料を参考にしました。
ストレングスモデルとはエンパワメントモデルをベースに提唱されたモデルで、以下のように定義されています。
リカバリー(その人の人生をとりもどすこと)」のために、「アスピレーション(熱望、夢、希望)」に重点を置き、「個人の強み(過去、現在、未来のすべての実験体験を含む)」と「地域の強み」を活用し、新たな生活設計や具体化を図ろうとするもの
ストレングスモデルには以下6つの原則があります。
- 精神障がい者は回復し、彼らの生活を改善し質を高めることができる。
- 焦点は病理でなく個人の強みである。
- 地域は資源のオアシスとしてとらえる。
- クライエントは支援プロセスの監督者である。
- ケースマネージャーとクライエントの関係が根本であり本質である。
- 我々の仕事の場所は地域である。
エンパワメントでもそうですが、クライエントが本来持っているリソースを最大限に活かして問題解決に取り組もうとする考え方です。
今回は以上です。
次回は(17)「福祉に関する心理学」をまとめます。
※(16)「健康・医療に関する心理学」は追加項目がないため、後回しにします。
python OptionParserにゼロ埋め整数値を入れようとして引っかかった話
OptionParserとは
コマンドラインオプションの解析器です。
https://docs.python.org/ja/3/library/optparse.html
以下のようなコマンドを叩くと、pythonのバージョン情報が表示されるかと思います。
python --version
このときの"--version"がオプション引数で、カスタマイズすることができます。
引数の型は"int"、"string"、"float"、"complex"などを指定できます。
今回引っかかった話
画像や音声など、何らかの処理をしてファイルを保存していきたいとき、こういったオプション引数やコマンドライン引数で保存ファイル名を指定するようなこともあるかと思います。
その時、動画や音声のフレームの番号にあたる番号をゼロ埋めで表示してファイル名に指定することもあるかと思います。
実は、上のページ内にもありますが、OptionParserでは、ゼロで始まる値をint型で引数に取ると8進数の値として扱われてしまいます。
以下に、オプションを設定する実装例を紹介します。
#test_parse.py from optparse import OptionParser parser = OptionParser() parser.add_option("-i", "--input_int", dest="input_int", help="set input (int)", metavar="INPUT_INT", type="int") parser.add_option("-s", "--input_str", dest="input_str", help="set input (str)", metavar="INPUT_STR") (opt, args) = parser.parse_args() print("parse int : ", opt.input_int) print("parse_str : ", opt.input_str) print(" -> cast int : ", int(opt.input_str))
このスクリプトに対し、以下のように実行します。
python test_parse.py -i 012 -s 012
そうすると、以下のように表示され、確かにint型にしてある"-i"オプションは期待した値とは違う値が出力されます。
parse int : 10 parse_str : 012 -> cast int : 12
その他入力を変えて実行していくと確認できますが、確かにint型に対して0埋めの値を入力すると8進数に変換されてしまうようです。
OptionParserを使用する際に知っておいて損はない話かと思いますので、記録しておきます。
公認心理師試験対策:(14)心理状態の観察及び結果の分析
はじめに
本記事は、2019年に実施される第2回公認心理師資格試験の自主学習のために、ブループリントの項目順にキーワードとその概要を並べていきます。
今回は14番目、「心理状態の観察及び結果の分析」についてまとめていきます。
この項目は出題割合が8%です。第2回の試験の出題割合としては2番目に高い値です。
というのも、この項目は心理検査や心理アセスメントについての心理師にとって重要な話題です。
心理状態の観察及び結果の分析
関与しながらの観察
精神科医であり社会心理学者であったサリヴァンが提唱しました。
客観的な観察者にとどまるよりも、自らが観察対象に関与しながら観察することで、問題の構造をより理解しようという考え方です。
主に幼児や児童を対象として行うプレイセラピーも、子どもとの関わりの中で子どもを観察することによって、対人関係における問題構造を体感的に理解することができます。
心理検査の適応、実施及び結果の解釈
実施上の留意点
心理検査の計画、実施の順に留意点をまとめていきます。
1. 心理検査の計画
心理検査の計画段階では、どの検査を実施するか選択することから始まります。
心理検査を選択する上では、複数のテストを組み合わせること(テストバッテリー)がほとんどですが、その際に留意すべき点があります。
第1に、「何を組み合わせるか」です。
組み合わせ方には、「縦」と「横」の両方向があります。
「縦方向」の組み合わせは、評価対象が同一で検査手法の違う検査を組み合わせることで、意識レベルの違いで統合的に評価することを目的とした組み合わせです。
例えば、パーソナリティの傾向を理解するための検査を実施する場合に、MMPIという質問紙法による検査とロールシャッハ・テストという投影法のテストを組み合わせるとします。
どちらもパーソナリティ傾向を理解するためのテストですが、質問紙で意識的な傾向、ロールシャッハ・テストで無意識的な側面も含めた傾向をみようとします。
一方で「横方向」の組み合わせは、評価対象の違う検査を組み合わせることで被検者を多角的に見ようとすることを目的とした組み合わせです。
例えば、子どもの学校の適応についてアセスメントするときに、知能検査とP-Fスタディという欲求不満耐性を理解するテストを組み合わせたとします。
この場合、知能検査で学業上での適応のつまずきはないかを確認するとともに、P-Fスタディで対人交流場面における欲求不満に対してどう関わっているのかを理解しようとします。
第2に、「どう組み合わせるか」です。
テストバッテリーを組んだとき、どの順番で行うかは重要です。
もし1つ目のテストの心理的負荷が大きい場合、2つ目のテストではエラーを起こしやすくなる可能性があります。
例えばMMPI(性格検査)とWAIS-Ⅲ(知能検査)を組み合わせたとします。
MMPIは550項目の質問に回答し、まともにやれば60分程度かかります。
また、WAIS-Ⅲは様々な問題を解くもので、90分程度かかります。
これらを何らかの理由で1日でやりきってしまわなければならないとします。
MMPIとWAIS-Ⅲをどちらからやるのが良いか、見解が分かれるかもしれませんが、MMPIを先にやり、続いてWAIS-Ⅲを実施するといった流れだと、検査によってかかった負荷がWAIS-Ⅲのパフォーマンスに影響するといったリスクが発生します。
なるべく普段どおりのパフォーマンスを理解するならば、WAIS-Ⅲから行い、MMPIを行う方が良いと判断されやすいでしょう。
心理検査の種類や検査対象などがこの文献で整理されていました。
また、次項の心理検査の実施の話にも関わりますが、計画段階では「何のために検査を実施するのか」を明確に定義しておくことが必須です。
2. 心理検査の実施
実施の際に真っ先に考える必要があるのは、被検者から検査の同意を得ることです。
インフォームド・コンセントとは、「十分な情報を得た上での同意」です。
検査においても、インフォームド・コンセントを取ることが必要です。
インフォームド・コンセントを取るためには、前項で必須とした「何のために検査を実施するのか」、検査目的を明確にし、計画したテストバッテリーがその目的に沿っていることを示す必要があります。
ここが疎かになると、検査を受けてもらえないか、受けてもらえてもまともな結果は得られません。
また、次項での結果の解釈に関わる点として、検査そのものの結果だけでなく、受検中の被検者の様子(受検態度、被検者からの質問内容など)も重要な情報で、記録しておくことが求められます。
今回は以上です。
次回は(15)「心理に関する支援(相談、助言、指導、その他の援助)」をまとめます。
公認心理師試験対策:(13)障害者(児)の心理学
はじめに
本記事は、2019年に実施される第2回公認心理師資格試験の自主学習のために、ブループリントの項目順にキーワードとその概要を並べていきます。
今回は13番目、「障害者(児)の心理学」についてまとめていきます。
発達は出題割合が3%ですが、第2回の試験で各種法律用語ががキーワードに追加されています。
法律関係は確認しておきたいので、まとめていきます。
障害者(児)の心理学
身体障害、知的障害及び精神障害
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 <障害者総合支援法>
条文は以下にあります。
www.japaneselawtranslation.go.jp
この法律の目的は以下のように明記されています。
障害者基本法の基本的理念にのっとり、 (中略) 障害者及び障害児がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与すること
また、この法律は、以下の法律と相まって目的を完遂するようにも明記されています。
- 身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)
- 知的障害者福祉法(昭和三十五年法律第三十七号)
- 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)
- 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)
- その他障害者及び障害児の福祉に関する法律
市町村の責務は以下の3点です(条文の要約)。
- 障害者(児)がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、関係機関との緊密な連携を図りつつ、必要な自立支援給付及び地域生活支援事業を総合的かつ計画的に行う
- 障害者(児)の福祉に関する情報提供、相談対応、調査および指導
- 意思疎通について支援が必要な障害者(児)が障害福祉サービスを円滑に受けられるよう環境を整備すること、障害者(児)に対する虐待の防止及び早期発見のために関係機関と連絡調整を行うこと、その他障害者等の権利の擁護のために必要な援助を行うこと
都道府県の責務は以下の4点です(条文の要約)。
- 市町村が行う自立支援給付及び地域生活支援事業が適正かつ円滑に行われるよう、市町村に対する必要な助言、情報提供
- 市町村と連携を図りつつ、必要な自立支援医療費の支給及び地域生活支援事業を総合的に行うこと
- 障害者(児)に関する相談及び指導のうち、専門的な知識及び技術を必要とするものを行うこと
- 市町村が行う障害者(児)の権利の擁護のために必要な援助が適正かつ円滑に行われるよう、市町村に対する必要な助言、情報提供
4番目については、助言や情報提供だけでなく、都道府県も市町村と協力して支援を行う旨の内容も併記されています。
次に、本条文で記載されている用語の定義をまとめます。
「障害者」とは、以下3点を指します。
- 身体障害者福祉法第四条に規定する身体障害者
- 知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち十八歳以上である者
- 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第五条に規定する精神障害者(知的障害者福祉法にいう知的障害者を除く)のうち十八歳以上である者
「障害児」とは、児童福祉法第四条第二項に規定する障害児及び精神障害者のうち十八歳未満である者をいいます。
「保護者」とは、児童福祉法第六条に規定する保護者をいいます。
「障害程度区分」とは、障害者(児)に対する障害福祉サービスの必要性を明らかにするため、当該障害者(児)の心身の状態を総合的に示すものとして厚生労働省令で定める区分です。
発達障害者支援法
条文は以下にあります。
この法律の目的は以下のように明記されています。
発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要であることにかんがみ、発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、学校教育における発達障害者への支援、発達障害者の就労の支援、発達障害者支援センターの指定等について定めることにより、発達障害者の自立及び社会参加に資するようその生活全般にわたる支援を図り、もってその福祉の増進に寄与すること
定義についてまとめます。
この法律で発達障害とは、以下のことを言います。
「発達障害者」とは、発達障害を有するために日常生活又は社会生活に制限を受ける者をいいます。
「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものをいいます。
「発達支援」とは、発達障害者に対し、その心理機能の適正な発達を支援し、及び円滑な社会生活を促進するため行う発達障害の特性に対応した医療的、福祉的及び教育的援助をいいます。
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 <精神保健福祉法>
条文は以下にあります。
この法律の目的は以下のように明記されています。
精神障害者の医療及び保護を行い、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)と相まつてその社会復帰の促進及びその自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行い、並びにその発生の予防その他国民の精神的健康の保持及び増進に努めることによつて、精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ること
「精神障害者」とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいいます。
都道府県は、「精神保健福祉センター」を設置する義務があります。
精神保健福祉センターは、以下の業務を行います。
- 精神保健及び精神障害者の福祉に関する知識の普及、調査研究
- 精神保健及び精神障害者の福祉に関する相談及び指導のうち複雑又は困難なものを行う
- 精神医療審査会の事務を行う
- 申請に対する決定及び支給認定(精神障害者に係るものに限る。)に関する事務のうち専門的な知識及び技術を必要とするものを行う
- 市町村(特別区を含む)が支給の要否の決定を行うに当たり意見を述べる
- 市町村に対し技術的事項についての協力その他必要な援助を行う
この法律では、心理師の試験で重要な入院形態についても書かれています。
入院形態 | 概要 |
---|---|
任意入院 | 本人の同意に基づいた入院 |
措置入院 | 精神障害者及びその疑いのある者を知った者が、その者について指定医の診察及び必要な保護を都道府県知事に申請して実施する入院 |
医療保護入院等 | 本人の同意なしに実施される入院、医療保護入院と応急入院を含む |
医療保護入院は、本人の同意なしに家族の同意があれば実施できる入院ですが、以下の条件があります。
応急入院は、本人及び家族の同意なしに実施できる入院です。
直ちに入院させる必要があるのに家族等の同意が得られていない場合に適用されます。
入院は72時間に限られます。
適用には以下の条件があります。
障害者(児)の心理社会的課題と必要な支援
合理的配慮
文部科学省のページで概要が整理されていました。
「合理的配慮」とは、障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいいます。
障害のある児童生徒等に対する教育を小・中学校等で行う場合には、合理的配慮として以下のことが考えられます。
- 教員、支援員等の確保
- 施設・設備の整備
- 個別の教育支援計画や個別の指導計画に対応した柔軟な教育課程の編成や教材等の配慮
合理的配慮の例は、以下のページにまとめられています。
上記は教育場面についてでしたが、以下の記事は職場など広い場面での合理的配慮の例や考え方がまとめられています。
今回は以上です。
次回は(14)「心理状態の観察及び結果の分析」をまとめます。
公認心理師試験対策:(12)発達
はじめに
本記事は、2019年に実施される第2回公認心理師資格試験の自主学習のために、ブループリントの項目順にキーワードとその概要を並べていきます。
今回は12番目、「発達」についてまとめていきます。
発達は出題割合が5%と、他の基礎的な問題に比べて問題数が多いです。
前年度からの追加項目はありませんが、筆者自身苦手な分野でもあるので、キーワードを絞って整理していきます。
発達
認知機能の発達及び感情・社会性の発達
素朴理論
以下の文献を参考にしました。
素朴理論とは、日常生活で独自に作り上げられ、通常は専門家の考え方(科学理論)とは異なる理論を指します。
素朴理論には、以下3つの特徴があります。
- 専門家の考え方とは異なる
- 多くの人に共通する考え方である
- 学校の授業を受けたくらいでは修正されない
つまり、子どもの発達において考えると、学習前にすでに経験的に獲得している素朴理論によって、学校の授業での学習が阻害される可能性があるということです。
この資料の例を引用しましたが、子どもは地球の形状(宇宙空間に浮いた丸い物質)について学習する前には、すでに以下のような素朴理論を獲得しています。
- 物体は支えなしに宙に浮けない
- 物体が動かずに静止した状態を保つためには、水平な面に置かれていなければならない
つまり、以下の点で矛盾してしまい、子どもにとっては受け入れがたいのです。
素朴理論 | 学習内容 | 子どもからみた矛盾点 |
---|---|---|
物体は支えなしに宙に浮けない | 地球は宇宙空間に浮いている | 支えもないのに浮くはずがない |
物体が静止するためには水平な面の上に置かれていなければならない | 地球は丸い | 丸い物体の上にあるものが止まっていられるはずがない |
学習面においては、以上のように素朴理論と発達が関連するようです。
一方で、臨床でターゲットにされるような学校集団への適応に関わるような問題と素朴理論との関連については調べても見つけられませんでした。
想像するに、素朴理論と学習内容との矛盾を解消し、概念を再構築するプロセスにおいて、自閉スペクトラム症児は社会的相互作用に障害がみられるため、概念の再構築が遅れてしまうといったリスクはありそうです。
(あくまで想像です。)
自己と他者の関係のあり方と心理的発達
相互規定的作用モデル(transactional model)
人と人、サブシステムとサブシステムの双方向に例えられる、互いに考慮した相互作用モデルです。
コミュニケーションやストレスコーピングの文脈で検討されているモデルです。
コミュニケーションとの関係については、以下の記事を見つけました。
www.slideshare.net
人は、以下の要因に依存して対人場面において反応を起こします。
- 背景
- 事前の経験
- 態度
- 文化的信念
- 自尊感情
人は互いに言語的、非言語的なメッセージを送り合いますが、相互規定的作用モデルの違う人にとっては、混乱するものであることもあります。
つまり、コミュニケーションにおけるこのモデルはコミュニケーションを円滑にもする一方で、メッセージにノイズを乗せる可能性もあるものだと考えられます。
このノイズはストレッサーにもなり得て、上述のストレスコーピングと相互規定的作用モデルとの関係の話に繋がります。
LazarusとFolkmanは、ストレスと相互規定的作用モデルのような環境と個人との相互作用とストレスとの関係に注目しました。
その上で、例えば相互規定的作用モデルを変容させることでストレッサーがストレッサーでなくなったり、自分で対処方略(コーピング)を身につけることでノイズを除去できる可能性を指摘しました。
生涯における発達と各発達段階での特徴
Developmental Origins of Health and Disease (DOHaD) 仮説
この仮説については、以下の記事で解説されていました。
ポイントは以下です。記事の引用です。
発達過程(胎児期や生後早期)における様々な環境によりその後の環境を予測した適応反応(predictive adaptive response)が起こり、そのおりの環境とその後の環境との適合の程度が将来の疾病リスクに関与する
生後間もないマウスを葉酸欠乏症にすることで、恐怖反応が過剰になるという例を聞いたことがあります。
また、記事にもあるように、ヒトであっても、妊娠期に胎児が栄養不足になると栄養を溜め込みやすい体質になり、メタボリックシンドロームのリスクが高まるようです。
精神的な症状においてもこのようなエピジェネティクス的な視点での理解が進んでいて、特にDNAメチル化との関連がわかってきているようです。
この文献では、児童虐待をきっかけにDNAメチル化の変化が起こることが指摘されています。
また、DNAメチル化の変化は成長後のストレス耐性、不安や社会性、恐怖記憶の獲得と固定等の行動面に影響を与えることもわかってきています。
生成継承性 (generativity)
「ジェネラティビティ」とカタカナ表記での用語の方が広く知られているようです。
この記事で解説されていました。
ジェネラティビティとは、エリクソンの造語であり、「次世代を導き、確立することへの関心」と定義しています。
次世代にのこすものは子どもだけでなく、知識、経験、芸術作品、著書などなどいろいろありますが、高齢期になるとそういったのこすものに対して関心を持ちます。
閉経を過ぎた女性が次世代の子育てを助けるといった行為も、自身の子育ての経験や知恵を次世代にのこすような意味を持つかもしれません。
また、次世代にのこせた実感が死の受容につながるようです。
しかしながら、高齢者本人にとっては利他的行動であっても、そのモチベーションは上述したような次世代にのこす(≒次世代に受け入れてもらう)ことで、必ずしも他者にとってポジティブに受け取ってもらえません。
端的に言えば、「ありがた迷惑」になってしまうケースもあります。
記事では、どのような継承行動が高齢者と次世代の若者とのギャップを埋めるのかについて議論しており、成功体験よりも失敗体験をもとに経験を語ってもらう方が受け入れられやすいと指摘しています。
高齢者の心理社会的課題と必要な支援
サクセスフルエイジング
以下の記事を見ました。
サクセスフルエイジングとは、「良い人生を送り、天寿を全うすること」です。
これが達成されるためには、社会学的、医学的、心理学的な視点から包括的に考える必要があります。
社会学的な視点としては、上述したジェネラティビティが重要な役割を持ちます。
つまり、次の世代に継承し、自らは社会からうまく離脱していくことが重要とする「離脱理論」が提示されています。
一方で、以前は「生涯現役」という言葉にあるように、高齢者も中年と同じような心理社会的なニーズを持っており、活動を継続することが重要とする「活動理論」も提示されていました。
医学的な視点としては、健康寿命の延伸が課題になります。
疾患や転倒、フレイル・サルコペニアの予防、QOLの向上により寝たきりの期間をいかに短くできるかに注目しています。
心理学的な視点としては、成長や発達がいかに良好であるかで考えます。
エリクソンのライフサイクル論でもあるように、人は生涯を通して発達すると考えられており、高齢期においては「統合性 vs 絶望」です。
良好であるかどうかの評価は、以下の6つの指標でなされると記事にはありましたが、どの理論を引用したのかが知りたいところです。
- 自己受容
- 人生の意味
- 環境制御
- 人間的成長
- 自律性
- 肯定的人間関係
自分でも調べてみて、確認できたら追記します。
今回は以上です。
次回は(13)「障害者(児)の心理学」をまとめます。
公認心理師試験対策:(11)社会及び集団に関する心理学
はじめに
本記事は、2019年に実施される第2回公認心理師資格試験の自主学習のために、
ブループリントの項目順にキーワードとその概要を並べていきます。
今回は11番目、「社会及び集団に関する心理学」についてまとめていきます。
社会及び集団に関する心理学
対人関係並びに集団における人の意識及び行動についての心の過程
対人ストレス
対人ストレスとは、対人関係におけるイベントがきっかけで引き起こされる心理的な負荷です。
全般的なストレスに対してコーピング(対処)が存在するように、対人ストレスに対しても対人ストレスコーピングがあり、社会心理学の分野で幅広く議論されています。
対人関係に限った話ではありませんが、ラザルスの理論では、全般的なストレスコーピングは以下の2種類に分類されると考えられています。
- 問題焦点型
問題を直接解決しようとする対処法
- 情動焦点型
気晴らしやストレッサーによる苦痛の軽減を目的とした対処法
集団内過程、集団間過程
ソーシャル・ネットワーク、ソーシャル・サポート
人と人とのつながりで形成されるネットワークをソーシャルネットワークといいます。
ネットワークは、いくつかのまとまりが存在しており、まとまりのひとつをクリークといいます。
しかしながら、ここ10年ほどでソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が普及してきたため、それ以前の研究とはネットワーク構造が変わってきています。
クリークも、学校などの単に物理的に近距離な集団よりも同じ趣味嗜好で形成されていることのほうが多そうです。
このような時代の変化を受けてか、Twitterを使用した研究も盛んに行われています。
ソーシャルサポートとは、社会的な資源により受けられる支援を指します。
この資料が参考になりました。
ソーシャルサポートには以下の4種類があります。
- 情緒的サポート
共感、安心、愛着、尊敬の提供
- 情報的サポート
問題解決の手助けと助言
- 道具的サポート
日常生活でのサービスや仕事による支援
- 評価的サポート
自己評価に関するフィードバック
ストレスの対処としてのソーシャルサポートは、以下2つの機能を持ちます。
- 健康維持と回復
- ストレスに対する緩衝機構
一方で、ソーシャルサポートはむしろストレスを増大させる指摘もあります。
大きなサイズのネットワークになると、そのサポートを受けるだけでなく、自らが与える際の役割感からストレスを感じやすくなります。
また、サポート源が家族の場合に、期待と実際の行動とに矛盾が生じるときに、サポートに対してストレスを感じるようです。
集合現象
あまり「集合現象」で検索をかけてもヒットしないのですが、ブループリントに加えるほどメジャーな用語なんでしょうか・・・
調べた限りでは、大衆行動とか、社会現象といった用語と並び、大衆行動は以下のように定義されています。
特定の個人、特定の集団の枠を超えて、不特定多数の人々、すなわち大衆が行う行動の集合をいう。
(引用元:大衆行動(たいしゅうこうどう)とは - コトバンク)
流行現象や、ある集合(集団)の情報への注意といった、マクロレベルでの現象を指すようです。
人の態度及び行動
家族、集団および文化が個人に及ぼす影響
家族関係
家族の中でも、母子関係は愛着やパーソナリティの形成に大きく影響を与えます。
そのような中で、極端な例として、虐待の有無は個人に大きくネガティブな影響を与えます。
虐待については、過去の記事で紹介しました。
試験に出るかはわからない余談ですが、個人から見た家族との関係性を捉える方法として、"Family System Test"(FAST)があります。
これは、家族の成員と個人との心理的な距離や、個人に対する影響性を視覚的に捉える方法の一つです。
http://repo.kyoto-wu.ac.jp/dspace/bitstream/11173/2105/1/0080_011_007.pdf
異文化間葛藤
「〇〇な人は☓☓だ」といった断定的な考え方は、特に文化間の差によっても起こりがちです。
この背景には、「アジア人」、「欧米人」といったカテゴリ化とそのカテゴリが持つステレオタイプが影響します。
以下の文献は、事例も含めてわかりやすそうでしたのでメモしておきます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsee/56/3/56_3_3_62/_pdf/-char/ja
本日は以上です。
次回は(12)発達をまとめます。
公認心理師試験対策:(9)感情および人格
はじめに
本記事は、2019年に実施される第2回公認心理師資格試験の自主学習のために、
ブループリントの項目順にキーワードとその概要を並べていきます。
今回は9番目、「感情および人格」についてまとめていきます。
感情および人格
感情に関する理論と感情喚起の機序
大体は以下の記事を参考にしています。
bsd.neuroinf.jp
感情に関する神経科学
1. 扁桃体(Amygdala)
側頭葉内側の奥にある、アーモンド型の領域です。
大脳辺縁系の一部と位置づけられます。
情動的な出来事に関連づけられる記憶の形成と貯蔵において主要な役割を担います。
恐怖反応や不安反応の神経生理学的な研究では、よく注目される領域です。
2. 視床下部(Hypothalamus)
間脳に位置する4g程度の小さな組織です。
摂食行動、睡眠、攻撃行動、性行動といった本能的な行動に関連する領域です。
体温調節やストレス応答などの管理も担っており、交感神経と副交感神経、内分泌を統合的に調整することで、生体の恒常性維持(ホメオスタシス)に重要な役割を果たします。
3. 島皮質(Insula)
前頭葉、側頭葉、頭頂葉、基底核に囲まれた領域です。
前部島では、行動発現、知覚、内受容、情動など、認知機能に関する活動がみられます。
また、島の活動は、以下のような知覚、認知機能に関わるという仮説があります。
島の活動 |
---|
味覚、痛覚、触覚、嗅覚、報酬、社会的な痛み、情動、社会的情動、共感、内臓覚、内受容、自己意識 |
4. 前頭前野腹内側部
前頭前野は、人を人たらしめる、思考や創造性を担う脳の最高中枢です。
映画「カッコウの巣の上で」で、主人公マクマーフィーは、最後にロボトミー手術を受けて廃人のようになってしまいます。
このロボトミー手術は、額に穴を開けて前頭前野をメスでぐりぐり傷をつけるような行為です。
前頭前野とその他の領域とのネットワークとを断ち切るようなイメージです。
腹側部(眼窩部)は、情動・動機づけ機能とそれに基づく意思決定過程に重要な役割を果たしています。
内側部は、社会的行動を支えるとともに、葛藤の解決や報酬に基づく選択など、多様な機能に関係しています。
感情の進化
このトピックについては、福田(2008)でまとめられていました。
要約すると、生物の進化の過程において、まず発達した感情は恐怖です。
捕食者から逃げるためには、危機を察知しなければなりません。恐怖はアラートの役割を果たします。
前回の記事では触れませんでしたが、明確な脅威が目の前に現れた場合に生じる反応は恐怖であり、生じる行動は逃避行動です。
一方、恐怖反応では間に合わないこともあるかもしれません。
臆病な個体は、「〇〇だったら☓☓だろう」といった予期に基づいて行動するかもしれません。
そうすると、「〇〇な」状況そのものに対して不快な感情を持つようになります。
このとき、「〇〇な」状況そのものは脅威ではないことがポイントです。
このような、明確な脅威は目の当たりにしていないが、何らかの脅威的な未来を予期して生じる感情が不安であり、生じる行動は回避行動です。
感情が行動に及ぼす影響
感情の制御
感情制御(emotion-regulation)とは、ざっくりいうと、「いつ何の感情をどのように体験するかを選択すること」です。
自己制御(self-regulation)の一部に位置づけられます。
こういったregulationの問題には、制御するための認知的な資源が(特性的に、あるいは状態的に)どれだけあるかという問題がついてきます。
端的に言えば、精神的に疲れている状態では、コントロールがうまく効かず、衝動的な行動に走りやすかったり、感情を抑えられず強烈な感情を体験する可能性があります。
感情と情報処理
上述のような制御も含め、感情に関わる情報処理には、ワーキングメモリが関わります。
ワーキングメモリでは情報の選択、組織化、統合、長期記憶の検索が行われます(Moreno, 2006)。
また、上述の自己制御がワーキングメモリでの情報処理を調整するため、精神的に疲れている状態では、これらの処理がうまくいきません。
さらに、「メモリ」という言葉の通り、ワーキングメモリそのものにも容量があります。
(特に感情的な)情報の処理がうまくいかないと、メモリをどんどん感情的な情報に食いつぶされてしまい、そのほかの処理が追いつかなくなります。
その結果、目の前の仕事や作業の効率が落ち、ネガティブな感情が生起する、といった悪循環に陥ります。
感情的になったり、うつを発症すると仕事でミスが連発するのはこういったプロセスを経ているためと考えられています。
本日は以上です。
次回は(11)社会及び集団に関する心理学をまとめます。
※(10)脳・神経の働きは昨年からの追加項目がない上に、これまで触れてきた内容とかなりかぶっているので省略します。