perlで手軽に統計量を計算する
perlとは
wikipediaによると以下のように説明されています。
Perl(パール)とは、ラリー・ウォールによって開発されたプログラミング言語である。実用性と多様性を重視しており、C言語やsed、awk、シェルスクリプトなど他のプログラミング言語の優れた機能を取り入れている。ウェブ・アプリケーション、システム管理、テキスト処理などのプログラムを書くのに広く用いられている。
このsed, awk, シェルスクリプトとの相性の良さから、perlで作成されたツールをシェルスクリプト内で呼び出すような使われ方を良く見かけます。
(音声認識ツールキットのKaldiでも、中身を覗くとperlのツールがたくさんあり、シェルスクリプト内で呼び出すように使われています。)
perlで統計量計算
今回作成したツールは、コマンドライン上の標準出力をperlに入力して動作するものになっています。
合計、行の数(=データの数)、平均、標準偏差を算出する仕様になっています。
使い方は後述します。
#!/usr/bin/perl use strict; use warnings; use utf8; binmode STDIN, ':utf8'; binmode STDOUT, ':utf8'; binmode STDERR, ':utf8'; my $sum; my $count; my @arr; while( <STDIN> ){ chomp; $sum += $_; $count++; @arr = (@arr, $_); } print "SUM : $sum \n"; print "COUNT : $count \n"; my $mean = $sum / $count; print "MEAN : $mean \n"; my $dist_sum; for ( @arr ){ my $dist_sq = ($_ - $mean) ** 2; $dist_sum += $dist_sq; } my $sd = sqrt($dist_sum / $count); print "SD : $sd \n";
使い方
Macであればターミナル上で動作します。
WindowsではWSL(Windows Subsystem for Linux)が使える環境であることが前提です。
また、前項のツールは、meansd_stdin.plというファイル名で保存し、ホームディレクトリ(~)の下に作成したtoolsフォルダの中に配置しています。
データの準備
今回はサンプルデータの王道、irisデータセットを使いたいと思います。
以下からダウンロードしました。
https://archive.ics.uci.edu/ml/datasets/Iris
iris.dataをダウンロードし、コマンドライン上でiris.dataがある場所に移動の上で以下のように入力すると、データの冒頭部分が見れると思います。
head iris.data
5.1,3.5,1.4,0.2,Iris-setosa 4.9,3.0,1.4,0.2,Iris-setosa 4.7,3.2,1.3,0.2,Iris-setosa 4.6,3.1,1.5,0.2,Iris-setosa 5.0,3.6,1.4,0.2,Iris-setosa 5.4,3.9,1.7,0.4,Iris-setosa 4.6,3.4,1.4,0.3,Iris-setosa 5.0,3.4,1.5,0.2,Iris-setosa 4.4,2.9,1.4,0.2,Iris-setosa 4.9,3.1,1.5,0.1,Iris-setosa
統計量の計算
今回作成したツールは、1列分のデータのみを受け付けるようになっています。
したがって、iris.dataから1列分だけ読み取るようにする必要があります。
今回は、3列目のデータを抜き出してみましょう。
以下のように入力すると、3列目だけを抜き取ることができます。
cat iris.data | cut -d , -f 3
1.4 1.4 1.3 1.5 1.4 1.7 1.4 1.5 ...続く
cut コマンドは、各行のある部分だけを抜き出して出力してくれるコマンドです。
今回は、-dオプションで','を指定し、-fオプションで'3'を指定しているので、「,で区切られた3フィールド目を表示」するようにしています。
次に、このデータは最終行が空行になっているため、以下のように入力して空行を削除します。
cat iris.data | cut -d , -f 3 | sed '/^$/d'
sedコマンドは、置換したり削除したり、追加するときに便利なコマンドです。
こちらのページが非常に参考になります。
では、この3列目のデータを入力に、統計量を計算しましょう。
コマンドライン上で以下のように入力します。
cat iris.data | cut -d , -f 3 | sed '/^$/d' | ~/tools/meansd_stdin.pl
以下のように出力されるかと思います。
SUM : 563.8 COUNT : 150 MEAN : 3.75866666666667 SD : 1.75852918340552
おまけ
irisは、品種ごとに比較することを想定したデータセットなので、ある品種における統計量を見たくなるかもしれません。
そんなときは以下のように使用する行を絞り込みましょう。
cat iris.data | grep Iris-setosa | cut -d , -f 3 | sed -e '/^$/d' | ~/tools/meansd_stdin.pl
前項で紹介した入力内容との差分を取ると、grepコマンドが増えています。
grepコマンドは、文字列を指定して、それを含む行(あるいは含まない行)を絞り込むために使用します。
(指定している文字列「以外」の行に絞り込む場合は-vオプションを使います。)
以下のように、結果が変わります。
SUM : 73.2 COUNT : 50 MEAN : 1.464 SD : 0.171767284428671
以上です。
個人的に気に入っているvimの設定
vimとは
エディターのひとつです。
以下の表に示すように、いくつかモードがあり、それぞれでできることが決まっています。
モード | できること |
---|---|
ノーマルモード | カーソルの移動など |
挿入モード | 文字の挿入 |
ヴィジュアルモード | 範囲選択、削除、コピー(ヤンク)、カットなど |
コマンドラインモード | ファイルの保存、新しいファイルを開くなど |
上記のモードの切り替え説明については、こちらの記事を参考にしました。
このモードの切り替えに慣れるまでは大変ですが、慣れると高速に、効率的に作業ができ大変重宝します。
さらに、vimの良いところはカスタマイズ性の高さにあります。
vimrcファイル(~/.vimrc)を作成することで、自分好みのエディターにカスタマイズできます。
今回は、このvimrcの一例を紹介します。
個人的に気に入っているvimrc
いくつかの記事を参考にして、以下の設定で落ち着きました。
" スワップ、バックアップ系 " バックアップファイルを作らない set nobackup " スワップファイルを作らない set noswapfile " 色の変更、表示系 " シンタックスの有効化 syntax on " 現在の行を強調表示 set cursorline " 括弧入力時の対応する括弧を表示 set showmatch " 検索語をハイライト表示 set hlsearch " ESC連打でハイライト解除 nmap <Esc><Esc> :nohlsearch<CR><Esc> " コメントの色を緑色 highlight Comment ctermfg=Green " タイトルを表示 set title " 行番号を表示 set number " ステータスの表示 set laststatus=2 set belloff=all " 操作系 " インデント幅 set shiftwidth=4 " タブキー押下時に挿入される文字幅を指定 set softtabstop=4 " タブの空白が半角スペースに set expandtab " yでコピーした時にクリップボードに入る set guioptions+=a " オートインデント set autoindent
vimのバージョンによっては、バックスペースが効かない問題が発生しました。
その際は、以下を追加することで解決しました。
set backspace=indent,eol,start
今回は以上です。
公認心理師試験:合格発表
はじめに
9/13、合格発表がありました。
なんとか、筆者は合格していました。
公式解答での自己採点では点数がギリギリだったので、今後気を引き締めていきたいところです。
今回の結果を受けて、試験勉強について振り返っていきたいと思います。
試験の合格基準点と合格率、配点の実際
試験の内容については、先日の記事でもありましたが、難易度は上がったように感じました。
これは私だけでななく、多くの人がそう感じていたようです。
その影響で、試験の合格基準点が調整される可能性も至るところで議論されていました。
実際のところ、合格基準点は調整されることなく138点(全体の6割)のままで、合格率は46.4%でした。
第一回と追試、そして今回の第二回にかけて合格基準点が6割で固定のため、今後も合格基準点は6割で固定だろうという確信度は高まりました。
配点についても、一貫して一般問題が1問1点、事例問題が1問3点となっています。
今後も事例に重きを置かれた配点となりそうです。
勉強方法の振り返り
実施してよかったと考えている点
ポイントは以下の2点だと考えます。
- 自分で調査する
- 調査内容を体系化する
上記項目について、順に考えてみます。
自分で調査する
批判を覚悟して正直に言います。
テキストを何冊か買いましたが、あまり身についた感覚がありませんでした。
理由は、ブループリントの不完全さにあると考えます。
ブループリントの内容は、まだ整理されていません。
項目の階層性も煩雑で、項目の重複も見られたかと思います。
そのためか、ブループリントをベースとしたであろうテキストは、一般的な理論や概念の紹介にとどまっていたように思います。
(範囲が膨大なので、紙幅の問題も大いにあるかと思いますが)
一方で、試験はマニアックな問題も多く含まれていました。
つまり、テキストと試験内容とのレベル感の乖離が目立ったように考えています。
ブループリントの内容は、試験の回数を重ねるごとに修正されていきます。
いずれはブループリントの修正に伴ってテキストの内容も調整され、テキストでの対策がしやすくなっていくものと思います。
ただ、当面のポイントは、本節のタイトルにあるように自分で調査することだと思います。
試験問題の作成者の立場に立ったとき、一番恐れるのは根拠のない解答を設定してしまうことです。
したがって、自身で調査し、一次ソースにいかに当たれるかがポイントです。
ただ、心理学は多義的な解釈を許容する学問のため、一次ソースの特定が困難なケースも多々あります。
そのため、試験対策の優先度は一次ソースの特定を比較的行いやすい法律関係(一次ソースは条文)、統計関係(一次ソースは定義式)が高くなるかと考えます。
断っておきますが、出版されているテキストが一次ソースに当たっていないかと言われるとそうではありません。
間違いなく、書かれている内容に根拠があるはずです。
問題は、その一次ソースを著者が解釈した言い回しで理解するだけにとどまることです。
解釈の余地がない根本を確認しておくということが重要だと考えます。
調査内容を体系化する
今回、私はこのブログ記事を通して調査内容を体系化してみました。
誰かに見られるかもしれないと思うと、根拠のあることを主張しようという気になります。
(本ブログでは、根拠のない考えや雑感もかなり含まれていたかと思いますが…)
上述しましたが、試験作成者にとって一番恐れるのは根拠のない解答を設定してしまうことです。
なので、体系化し、発信する内容は試験問題に近いものがあるかもしれません。
(この感覚に根拠は一切ありません。)
体系化するもう一つのメリットは、情報の過不足を判断しやすい点です。
調査し、体系化し、そして不足分を追加で調査する、というサイクルができてきます。
やり方に問題があったと思う点
今回の受験に際して、良くなかった点も考察します。
今考えている問題点は以下の2点です。
- 動くのがおそすぎた
- ブループリントの上から順に取り組んでしまった
上記項目について、順に考えていきます。
動くのがおそすぎた
今回、動き始めたのは今年の2月頃からでした。
しかもその時は、テキストを惰性で読んでいただけで、ほとんど動いてないようなものです。
今回の自分で調査→ブログ記事化のサイクルで活動し始めたのは年度が変わった後くらいからだったと思います。
最初に記事を書いたのは6/23とかなり遅いです。
初動の遅さが原因で、心理療法や発達などの出題割合が大きい項目についてはあまり取り組めませんでした。
ブループリントの上から順に取り組んでしまった
この失敗はかなり大きかったです。
やってる間に気づきましたが、気づいた頃には遅かったです。
ブループリントの上の方は、出題割合が概ね2%で、出題割合の観点から言えばあまり優先されるものではないです。
まして、まだ整理しきれていないブループリントをあてにしすぎた悪手だったと思っています。
次に受験される方へ
前節の振り返りを踏まえて、受験対策として以下4点がポイントになるかと考えます。
- 今から動く
- 過去問を解き、出題傾向と自身の得意領域、不得意領域を知る
- ブループリントの出題割合と自身の理解度とを照らし合わせて、項目の優先度を計画する
- 自分で調査し、それを体系化する
以上です。
公認心理師試験対策:試験を受けての所感
はじめに
8/4(日)に公認心理師試験が終了しました。
試験終了後からtwitterや5ch、ブログなどで感想や解説など情報が飛び交っています。
私自身も記憶が風化しないうちに記録しておこうと思います。
形式的な側面
公認心理師試験は多肢選択式の試験です。
河合塾の分析速報では、4択が削られ5択が増えたとありますが、確かに5択が多いなという印象でした。
また、これは臨床心理士の試験でもそうでしたが、結構選択肢を削るのが難しかった問題も結構あったように思います。
(明らかな誤答とする解答があまり含まれていない)
これは私自身勉強不足だったという原因も大いにありそうですが。
第1回試験、そして追試では、読解が困難な問題も結構含まれていました。
正答に結びつけるだけの情報が不足しているような問題も見受けられました。
一方で、今回の試験では、問題そのものがおかしいというようなものは相対的に少なかったような印象を持ちます。
難易度について
上述のように、問題文や形式はある程度改善されたように思われます。
一方で、難易度は上がったなという印象を持ちました。
検査や治療・介入プログラムの略称が選択肢になっていることもあり、幅広く正確に覚えていないと混乱するような問題が多かったように思います。
本来は学部から修士過程にかけてじっくり勉強した受験生に向けた試験であることも考えると、妥当な難易度かなと思いました。
ただ、色々なところから解答速報が公開されていますが、各社で見解が違ったり、複数のバージョンが存在する(見解が変わる)ことを考えると、多肢選択式の試験にしてはまだ改善の余地のある問題ではあるのかなとも思っています。
複数解釈を許容するような概念や理論が多く存在する心理学の特性を考えると、ある程度は仕方のないことなのかもしれませんが…
その他雑感
過去の記事で、試験とはそんなに関係なさそうだと思いながら挙げたマガーク効果が試験の選択肢で出ていましたね(問81の①)。笑
このブログを見た方であれば、真っ先に選択肢を切り捨てられたのではないでしょうか。
ちょっとは貢献できたかなと勝手に嬉しくなっていました。
では、以上です。
公認心理師試験対策:向精神薬の効果と副作用
向精神薬とは
向精神薬は中枢神経系に作用し、精神活動に何らかの影響を与える薬物です。
本来、薬物は中枢神経系に作用しません。
脳血管関門(BBB)というフィルターがあり、そこを薬物などの物質は通ることができないからです。
G○BAというチョコレートがあったかと思いますが、経口摂取してもBBBをGABAが通ることがありませんので、効果がないという指摘も以前ニュースになっていたかと思います。
気分を落ち着ける、という効果を期待したとき、GABAがBBBを通る通らないに関わらないところで落ち着ける効果がないとも言い切れませんし、このチョコレートで押されている気分を抑える効果を全面的には否定しません。
向精神薬の分類と概要を以下に整理します。
分類 | 概要 |
---|---|
抗精神病薬 | 主に統合失調症の症状を抑えるために使用。 |
抗うつ薬 | うつ病の治療に使用。一部の抗うつ薬は強迫性障害や一部の不安症にも使用する。 |
抗不安薬 | 不安を抑える薬。 |
気分安定薬 | 気分の波の大きさを落ち着ける薬。双極性障害に使用される。 |
精神刺激薬 | ドーパミン受容体に作用する。ナルコレプシーやADHDに使用される。 |
睡眠薬 | 睡眠を誘導する薬。 |
上表を元に、各種向精神薬の効果と副作用を整理していきます。
各種向精神薬の効果と副作用
抗精神病薬
メジャートランキライザーとも呼ばれます。
ドーパミンD2受容体に作用し、ドーパミンの受容を遮断します。
このような受容体に対して、神経伝達物質の受容を遮断する働きを持つ薬物をアンタゴニストと呼びます。
統合失調症や躁状態の方に選択される薬です。
定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬があります。
非定型抗精神病薬はドーパミンD2受容体だけでなく、セロトニン5HT2A受容体にも作用します。
また、ドーパミンD2受容体の拮抗作用は定型抗精神病薬に比べてゆるいです。
副作用として、口渇、便秘、錐体外路症状や、肥満といった代謝の異常、母乳が出るといった高プロラクチン血症などがあります。
錐体外路症状や口渇、便秘は、非定型抗精神病薬の方が定型抗精神病薬よりも少ないです。
抗精神病薬の副作用としての錐体外路症状とは、筋緊張低下‐運動亢進症候群の錐体外路症状を指し、筋緊張が低下して多動状態がみられます。
無意識に身体が動くような症状が見られます(ジスキネジア、舞踏病、アセトーぜなど)。
高プロラクチン血症とは、プロラクチンの分泌が促進される症状ですが、本来プロラクチンの分泌は視床下部でコントロールされます。
視床下部の障害によって脱抑制が起きるとプロラクチン分泌が過剰になり高プロラクチン血症が発症します。
なお、プロラクチンの分泌にはドーパミンも関わります。
高プロラクチン血症と関わるのが甲状腺機能低下症です。
甲状腺機能低下症が起きると、女性であれば無月経などの問題が起こります。
抗うつ薬
うつ病の治療に使用される薬物です。
抗うつ薬は、以下5種類あります。
副作用について、三環系および四環系抗うつ薬では、抗コリン作用が生じます。
その結果、口渇、便秘、目のかすみ、排尿困難が生じます。
SSRIの副作用は、消化器系の問題(吐き気、下痢、食欲不振など)や、口渇、頻尿などがあります。
抗うつ薬としては効果と矛盾しそうな話ですが、SSRIの副作用として自殺念慮や自殺企図の増加も挙げられます。
また、躁転のリスクにも注意しながら使用する必要もあります。
抗不安薬
不安症の治療に選択されます。
特にベンゾジアゼピン系の抗不安薬をトランキライザー(マイナートランキライザー)とも呼びます。
GABA受容体にあるベンゾジアゼピン受容体に働き、塩素イオンの流入を促進します。
このような物質の流入を促進する効果のある薬物をアゴニストと呼びます。
ベンゾジアゼピン系の抗不安薬には、効果時間の関係から、短時間型、中間型、長時間型に分類されます。
副作用としては、筋弛緩作用、健忘などがあります。
抗不安薬において最も留意すべき点は、依存性です。
依存性だけで言えば、アンフェタミン(覚せい剤)に並ぶという知見もあります。
特に短時間型でそのリスクが高まりますが、薬を長期間使用し続けると効果が悪くなり、断薬における離脱症状も発生します。
この点から、最近ではベンゾジアゼピン系の使用は避け、抗不安薬による症状低下を図る薬物治療方針も最近では取られています。
気分安定薬
大きな気分の波を落ち着ける働きを持つ向精神薬です。
双極性障害の治療で選択されます。
抗てんかん薬は気分安定薬に分類され、気分安定薬として説明されるほとんどの薬剤が抗てんかん薬に分類されます。
白血球数の低下や肝機能の低下などが副作用としてあげられるため、全血球計算(CBC)や肝機能など、治療薬物モニタリングが必要です。
公認心理師試験対策:(19)司法・犯罪に関する心理学
はじめに
本記事は、2019年に実施される第2回公認心理師資格試験の自主学習のために、ブループリントの項目順にキーワードとその概要を並べていきます。
今回は19番目、「司法・犯罪に関する心理学」についてまとめていきます。
この項目は出題割合が9%と出題割合が最も高いです。
公認心理師が専門的な活動をする5つの領域(保険医療、福祉、教育、司法、産業)のひとつに関わる話題のため、重点的に出題されるものと思われます。
今年追加されたキーワードは中項目(2)司法・犯罪分野における問題に対して必要な心理的支援の以下4項目です。
- 非行・犯罪の理論
- 非行・犯罪のアセスメント
- 施設内処遇と社会内処遇
- 司法面接
司法・犯罪に関する心理学
司法・犯罪分野における問題に対して必要な心理的支援
非行・犯罪の理論
非行とは、以下のように定義されています。
広義には,反社会的な逸脱行動を意味する。この意味では,成人についてもあてはまるが,1948年に改正された現行の少年法にこの用語が盛り込まれたのを契機に,一般用語としても,特に青少年の行為を指して用いられるようになった。少年法の規定では,20歳未満の青少年の,保護処分となる〈犯罪行為〉〈触法行為〉及び〈虞犯〉の三つを総称して〈非行〉とする。近年非行の低年齢化が社会問題となっている。
引用元は、以下の記事の「百科事典マイペディアの解説」です。
kotobank.jp
引用にもあるように、非行そのものは成人にも当てはまりますが、特に少年による反社会的な行動に着目されています。
少年の非行に関して、少年法では以下のように区別されます。
elaws.e-gov.go.jp
種別 | 内容 |
---|---|
犯罪少年 | 罪を犯した少年 |
触法少年 | 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年 |
ぐ犯少年 | 将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年 |
ぐ犯少年は、特に以下の事由が認められることを前提としています。
- 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
- 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。
- 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。
- 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
非行のリスクファターとして、以下の記事でまとめられています。
www8.cao.go.jp
少年院に収容されている少年に対して、ACE(Adverse Childhood Experiences 逆境的小児期体験)調査を行なった結果、以下の点で共通していることがわかりました。
項目 | 内容 |
---|---|
身体虐待 | くりかえし身体的な暴力を受けていた(なぐられる,けられる,など)。 |
心理虐待 | くりかえし,心理的な暴力を受けていた(暴力的な言葉で痛めつけられる,など)。 |
性的虐待 | 性的な暴力を受けていた。 |
酒薬物 | アルコールや薬物乱用者が家族にいた。 |
母親暴力 | 母親が暴力を受けていた。 |
精神疾患 | 家族に慢性的なうつ病の人がいたり,精神病をわずらっている人がいたり,自殺の危険がある人がいた。 |
家庭欠損 | 両親のうち,どちらもあるいはどちらかがいなかった。 |
服役 | 家族に服役中の人がいた。 |
ネグレクト | 親に無視されていた(学校に行かせてもらえない,食事を作ってもらえない,など)。 |
以上からは、養育者からの影響を強く受けているように見えます。
非行・犯罪のアセスメント
この資料を参考にしました。
少年鑑別所においては、面接、心理検査、行動観察で非行少年の特性を理解しようとしているようです。
心理検査では、知能検査、性格検査、適性検査などを適宜組み合わせて実施しています。
行動観察では、以下の項目に着目して観察しているようです。
- 知的能力
- 行動傾向(特に対人傾向)
- 情緒、意欲
- 社会的態度、価値観
- 生活習慣 など
また、以下の点は少年鑑別所で特に重視されているようです。
- 職員(大人)による指導への反応性
- 少年鑑別所でのルール・枠組みの理解、受け入れ
- 集団場面での一定程度の適応(行動等の統制)
以上からわかることは、非行や犯罪など、反社会的な行動がテーマとなるため、矯正施設という統制された空間における集団の中での行動特性、適応性を見ているようです。
施設内処遇と社会内処遇
以下の記事を参考にしました。
www.moj.go.jp
施設内処遇とは、受刑者あるいは少年院に収容された少年に対する、刑務所あるいは少年院の中で行われる処遇です。
社会内処遇とは、刑務所や少年院などの施設の外で行われる、社会の中で行われる処遇です。保護観察官あるいは保護司による保護観察がこれにあたります。
保護観察官は保護観察所に所属する国家公務員であるのに対して、保護司は地域で活動するボランティアです。
保護観察期間は、対象者は以下のルールを守る必要があります。
1. 一般遵守事項(対象者全員に付けられるルール)
(例)
- 再び犯罪をすることがないよう,健全な生活態度を保持すること
- 保護観察官や保護司の面接を受けること
- 生活状況を申告し,必要に応じて生活実態に関する資料を提出すること
- 転居や旅行をする場合には,事前に保護観察所長の許可をうけること
2. 特別遵守事項(事件の内容や事件に至った経緯等を踏まえ,個人の問題性に合わせて付けられるルール)
(例)
司法面接
以下の記事を参考にしました。
forensic-interviews.jp
司法面接とは、子ども(および障害者など社会的弱者)を対象に、以下の3つの目的を持って行う面接のことです。
以下に3つの目的を示します。
目的1:子どもからの聞き取りが子どもに与える負担をできる限り少なくする。
目的2:子どもから聞き取る話の内容が間違った誘導の結果ではないかという疑念がもたれる可能性をできるだけ排除する。
目的3:子どもの関わった事件が何らかの作為による虚偽の話ではなく実際にあった出来事であるかどうかを検討するための情報を得る。
コトバンクでは、司法面接は主に虐待を受けた子どもを対象とする面接のようです。
kotobank.jp
今回は以上です。
次回は(20)「産業・組織に関する心理学」をまとめます。
公認心理師試験対策:(17)福祉に関する心理学
はじめに
本記事は、2019年に実施される第2回公認心理師資格試験の自主学習のために、ブループリントの項目順にキーワードとその概要を並べていきます。
今回は17番目、「福祉に関する心理学」についてまとめていきます。
この項目は出題割合が9%と出題割合が最も高いです。
公認心理師が専門的な活動をする5つの領域(保険医療、福祉、教育、司法、産業)のひとつに関わる話題のため、重点的に出題されるものと思われます。
今年追加されたキーワードは中項目(1)福祉現場において生じる問題とその背景の「精神障害」です。
知的障害、身体障害に並び、精神障害も扱うべきとのことで追加されたそうです。
追加したのはいいものの、あまりにふんわりしすぎているので、昨年の問題をベースにまとめていきます。
福祉に関する心理学
福祉現場において生じる問題とその背景
児童虐待
虐待については、以下の記事で紹介しました。
seijmura.hatenablog.com
過去問の内容に沿って以下の項目を補足します。
統計情報は、以下のページを参考にしています。
www.orangeribbon.jp
- 虐待による死亡例の加害者は実母が多く、ついで実父あるいは複数の加害者であることが多いです。
→上記事の「死亡した子どもの主な加害者」を参照
認知症
以下の記事でまとめられています。
認知症とは、以下のように定義されています。
生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態
つまり、一度獲得した能力やスキルが低下したり失われる状態を指します。
診断基準により表記は異なりますが、それぞれの診断基準を挙げます。
診断基準のまとめは、この資料を引用しました。
ICD-10
G1. 以下の各項目を示す証拠が存在する
1) 記憶力の低下
新しい事象に関する著しい記憶力の減退、重症の例では過去に学習した情報の想起も障害され、記憶力の低下は客観的に確認されるべきである。
2) 認知能力の低下
判断と思考に関する能力や情動処理全般の悪化であり、従来の実行能力水準からの低下を確認する。
1)、2)により、日常生活動作や遂行機能に支障をきたす。
G2. 周囲に対する認識(すなわち、意識混濁がないこと)が、基準G1の症例をはっきりと証明するのに十分な期間保たれていること。せん妄のエピソードが重なっている場合には認知症の診断は保留。
G3. 次の1項目以上を認める。
1) 情緒易変性
2) 易刺激性
3) 無感情
4) 社会行動の粗雑化
G4. 基準G1の症状が明らかに6ヶ月以上存在していて確定診断される。
NIA-AA (National Instituteon Aging-Alzheimer's Association)
1. 仕事や日常生活の障害
2. 以前の水準より遂行機能が低下
3. せん妄や精神疾患ではない
4. 病歴と検査による認知機能障害の存在
1) 患者あるいは情報提供者からの病歴
2) 精神機能評価あるいは精神心理検査
5. 以下の2領域以上の認知機能や行動の障害
a. 記銘記憶障害
b. 論理的思考、遂行機能、判断力の低下
c. 視空間認知障害
d. 言語機能障害
e. 人格、行動、態度の変化
DSM-5
A. 1つ以上の認知領域(複雑性注意、遂行機能、学習および記憶、言語、知覚ー運動、社会的認知)において、以前の行為水準から有意な認知の低下があるという証拠が以下に基づいている:
(1) 本人、本人をよく知る情報提供者、または臨床家による、有意な認知機能の低下があったという懸念、および
(2) 標準化された神経心理学的検査によって、それがなければ他の定量化された臨床的評価によって記録された、実質的な認知行為の障害
B. 毎日の活動において、認知欠損が自立を阻害する(すなわち、最低限、請求書を支払う、内服薬を管理するなどの、複雑な手段的日常活動動作に援助を必要とする)
C. その認知欠損は、せん妄の状況でのみ起こるものではない。
D. その認知欠損は、他の精神疾患によってうまく説明されない(例:うつ病、統合失調症)
以上から共通しているのは以下3点と思われます。
- 主に記憶、遂行機能、認知機能が障害されている。
- せん妄による認知機能の低下と区別するために、せん妄エピソードがある場合には診断が慎重になる。
- 精神疾患による認知機能の低下と区別するために、精神疾患である可能性を除外した上で認知症であるかが疑われる。
ICD-10を除く2つの診断基準では、検査や病歴があるかが基準に含まれています。
これは独り言ですが、DSM-5で何度も出てくる「有意な」とは、よく統計で見かけるあの有意性でしょうか。
何をもって(どれくらいの期間で、どれだけ低下すれば)「有意な低下」とするのか、不思議です。
今回は以上です。
次回は(19)「司法・犯罪に関する心理学」をまとめます。
※(18)「教育に関する心理学」は追加項目がないため、後回しにします。